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エル・カラファテ とペリト・モレノ氷河(Perito Moreno Glacier)



カラファテ空港。空港はアルヘンティーノ湖(Lago Argentino:アルゼンチン湖)のすぐ横に位置している。2月のカラファテの空は、陽は暖かく風は乾いて心地よかった。空港のロビーにはカラファテ空港の位置を示す分かりやすいディスプレスと地図があった。

エル・カラファテへ

 成田から12時間かけてアトランタに到着。6時間の乗継ぎの時間を経て、アトランタからアルゼンティンの首都・ブエノスアイレス・エセイサ国際空港へ10時間かけて到着した。2時間30分の乗継の待ち時間。


アルヘンティーノ湖とカラファテを中心にした地図。左の半島の先にペリト・モレノ氷河がある。

 ブエノスアイレスの国内空港からさらに3時間余りをかけてパタゴニアのエル・カラファテの空港へ。
 日本を出発してから、ちょうど地球の裏側に到るのに要した時間は通算34時間だった。直通便があれば12時間で到着しそうなものだが、実際に稼働している交通手段を利用すると3倍の時間がかかることになる。
 2014年2月、日本からみて地球の反対側にあたるカラファテ空港に立った。今回のツアーは何度目かのU社さんにお願いした。

 カラファテは、かって6,000人の町だったが10年で16,000人の町になった。カラファテはペリト・モレノ氷河への観光の拠点の町で、アルゼンチンのパタゴニアで最も重要な観光地の一つとなっている。


カラファテの木と実。

 カラファテの町の名前は植物の名前からきている。この辺りはカラファテの木がよく茂っていたために、その名がついたのだという。カラファテの実を食べると、この地に再び戻って来ることが出来るという伝説がある。
  食べてみた。キイチゴかブルーベリーか。いや独特の苦みや渋みがある。ジャムになってお土産として売っていた。カラファテの実のビールもあった。
  カラファテの木はパタゴニアの風土によく合うようで、パタゴニアのどこの茂みでも見つけることができた。

 カラファテの氷河国立公園事務所。
 入り口に馬をひいた開拓者なのか公園管理者なのか、頼もしそうな像があった。観光客がこの像の前で記念写真をとっていた。園内にはこの辺りで出土した恐竜の骨などがディスプレイされていた。


先住民の写真がお土産屋の看板として掲げられていた。

 町は大きくはないが観光の街らしく土産物屋がたくさんある。土地の民族的な手工芸品を販売しているお土産屋さんに先住民族の写真が大きく掲げられていた。男たちの土地に根を張って生きてきた者の誇りがにじみ出ていた。みじめな写真が多いなか、心惹かれるよい写真だった。


旅情が深い、ルヘンティーノ湖とアンデスに沈む月

 カラファテの町は南緯50度の高緯度にあるため、夏の日没は遅い。2月13日は午後9時5分の日没だった。
 日本とは12時間の時差があり昼と夜が真逆のこの地では、寝付けない。2時間ごとに目が覚める。午前5時過ぎ、風が冷たい外に出た。月が南アンデスの山影に沈もうとしていた。月影がアルヘンティーノ湖面に反射して輝いていた。辺りには風の音だけが寂しげな声を出していた。

 今日はペリト・モレノ氷河観光。よい天気になりそうだ。

 


ロス・ススピロス(ため息)展望台より、モレノ氷河を望む。天気が良すぎて氷河が白く光り、カメラの露出が合わせずらい。

ペリト・モレノ氷河へ  [地図]

 カラファテからバスでトイレ休憩を入れながら約2時間、モレノ氷河を遠景する展望台についた。
 氷河の左の頂上がやや左に折れた山はモレノ山1,670m。左に曲がった三角形は印象的で遠方からでもそれとわかる。標高はそれほどではないが、1,000m付近で森林限界になり、3,000m級の高山に見える。

 ペリト・モレノ氷河は、アルゼンチンの学者フランシス・パスカシオ・モレノ博士の名にちなんで1940年に命名された。彼は、1877年にサンタ・クリス川を遡ってアルヘンティーノ(アルゼンチン)湖にやってきた。モレノ氷河までは来ていないが、このあたりの研究やチリとの国境線を決定するときの功績などを残した。


「展望台」から見たペリト・モレノ氷河の全景。 南アンデスの氷床から溶け出た氷河はチリ側ではフィヨルドを、アルゼンチン側では湖を造っていた。
クリックで拡大、ブラウザを横に広げてお楽しみください。

展望台は山に沿って何段にも構成されていて、整備された通路をたどって氷河の最先端近くまで行くことができる。最下段の第一展望台では迫力のある氷河の崩落を間近で観察することができる。

 ペリト・モレノ氷河はロス・グラシアレス国立公園にある。太平洋の湿気を含んだ風がアンデスの山々にぶつかり、大量の雪を降らせ、積もった雪が圧力で氷結し氷河を形成する。降った雪が氷河になるまで10年もかからないという。南パタゴニア氷原からは48の氷河が流れ出している。ペリト・モレノ氷河もその一つで、アルヘンティーノ湖に流れ込んでいる。氷河の長さは30km、終端部は幅5kmで、水面からの平均の高さは60m、水面下に110mの氷があり、氷全体の高さは170mである。氷河の厚さは最大で700mもある。氷河の進む速度は中央付近で一日あたり最大2mで、流れ出た氷河は対岸の半島にぶつかりアルヘンティーノ湖とリコ水道の2つの湖に分かれる。氷河は対岸の半島にぶつかったあたりで崩壊し、氷河全体としてはここで進行を停止する。左下の写真がその航空写真である。


モレノ氷河付近の衛星写真。 案内板より。

  アルヘンティーノ湖にはいくつかの氷河が流れ込んでいる。リコ水道は周りの山からの川が流れ込んでいて水量が多い。氷河が湖を2つに分断しせき止めると、リコ水道の水位が数m、最大で30mほど上昇する。
 リコ水道からの水圧が氷河に穴をあけトンネルをつくり、 アルヘンティーノ湖に流れ込もうとする。そのトンネルが数年に一度崩れる現象を大崩落という。大崩落は1988年、2004年3月、2006年3月、2008年の冬、2012年3月に起こっているという。大崩落の規則性はないようだ。
 南パタゴニア氷原は、凍結した陸塊としては南極大陸、グリーンランドに次いで、現在の地球上では3番目に大きい。氷原から約48の氷河が流れ出ている。氷河の多くが毎年後退し縮小しているが、前進しているのはこのペリト・モレノ氷河とピオ十一世氷河の2づだけだという。


音がしてカメラを向けると、崩落は終わり水柱が。 クリックで拡大。

 氷河の崩壊はやはり暖かい12月から3月の夏場に多い。数分ごとに氷壁が崩れ落ちる音がする。爆発のような音だが、音が聞こえた時には水面で水しぶきが上がっており、なかなか崩落のよい写真が撮れない。氷河の中には上流で溶けた水が流れる川があるという。崩落の音がしても多くは氷河の中の川に壁面だという。音はすれど姿は見えず。左の2枚の写真は、大きな水しぶきが上がったところをかろうじて撮ったもの。
 自然の大きな営みを前に、人はただ「すごいな、すごいな」 を連発して、アホのように見ているだけ。崩落の音を聞き、氷壁がはがれ落ちるスローモーションのような瞬間に立ち会い、水しぶきが上がるのを見届ける。それを何度繰り返したのだろう。


第二展望台の観光客。その下に第一展望台がある。 クリックで拡大。

 ペリト・モレノ氷河は水面の下まで氷が続いていて、湖底についているという。アンデス山脈の東のアルゼンチン側に流れ出た氷河は溶けてアルヘンティーノ湖などの湖をつくる。氷山の青みが、やや曇った美しいエメラルド色の湖をつくるのだという。
  東側(チリ側)の太平洋に続くフィヨルドに流れ出た氷河は、海面に浮かんでいて、大きな氷山となって海面に流れ落ちる。規模や迫力は太平洋側の方が上だという。ただ、フィヨルド側は交通の便が悪く、残念ながら容易に近づくことができない。

 2日間、展望台から見たり、水面近くをトレッキングした。すぐ側でみる青い氷河の美しさと崩落体感の快感に満たされて歩いてきた。


クルーズ船からの眺め。

モレノ氷河クルーズ

 リコ湾の船着場からクルーズ船に乗り込む。船室の席に座り英語の案内を聞き、OKサインが出たら2階のデッキへ。快晴、爽快。


氷河の青が空の蒼に溶け込んで白い光をはなつ。 クリックで拡大。


向こうのクルーズ船の目前で大きな氷壁が崩落し音とともに水煙があがった。あの船に乗っていたかった。

 切り立つ氷壁が幾重にも割れ、割れ目に陽が差し込み、空の蒼に溶け込んでいた。氷河の自然で柔らかな青色が逆光ぎみの陽光のなかで透ける。自然のダイナミックな営みはこんなに美しい色をしていた。


歩いて20分、氷河は目前。

モレノ氷河上のミニトレッキング

 リコ湾の対岸まで船で渡り、その後アイゼンを着けて「ペリト・モレノ氷河」の氷上ミニトレッキングに。(氷上トレッキング:歩行時間約1.5時間、歩行距離1.3〜1.6km、高低差100〜150m) モレノ氷河の氷で割ったウイスキーのオンザロックが売り。
 5時間以上のロングトレッキングコースもあり、それを楽しみにしていたのだが、残念ながらミニの方だった。
 リコ湾の船着場から氷上トレッキング者専用の船に乗り、対岸の待合所へ。そこから歩き出して20分、氷河のすぐ横のアイゼン装着小屋に到着する。私たちはカナダ人、フランス人との混成グループとして出発した。


目前にはアイゼン装着小屋、向こうには切り立った氷山の壁。

 アイゼン装着小屋に着くと、係の人が一人ひとりの靴にアイゼンを慣れた手つきで装着してくれる。さあ、出発だが、その前に女性のガイドさんが氷河の上の歩き方、急坂の登り方と降り方を説明してくれる。目前にはそそり立つ氷壁。どうやら氷河の上は平らではなさそうだ。

 氷の上は、ツルツル・ガチガチではなく、ザラメ状の表面で、アイゼンは食い込みやすい。ただザラメは弱いので足に力は入れられない。 慎重に歩き出す。何かあれば自分より他の人たちに迷惑がかかってしまう。
 氷河がモレノ山の山肌を削り、氷河と山の間に谷間を造っている。この谷間から氷河の上に出るには100m以上は登らなくてはならない。外観はなんでもないような氷河だが、陸から氷河の上に出るだけでも高低差100m以上の山とクレパスの登り降りをしなければならない。


氷河上をトレッキングする人たち。休憩しているようだ。氷河の上にでるためにはこの氷山を登りきらなければならない。


 アイゼンを氷に食い込ませ、一歩一歩としっかり踏みしめながら歩く。先に出発したグループが休憩しているのが見える。どうやら、氷河の上とは言っても、中腹あたりで折り返してくるようだ。


ロング氷上トレッキングの人たちは、この氷の山をどこまで登っていくのだろうか。

 はるか向こうに、氷河の上を目指すグループがいた。ロングコースの人たちのようだ。彼らは氷河の比較的平らな部分にまで上り周回するのだそうだ。

 大小のクレパスが氷の口を開いている。クレパスは青い水をたたえている。この氷河の溶けた水は大変おいしいとしいという。前日、ガイドさんから空のペットボトルを用意しておくようにと言われていたので、小さなクレパスの水溜りにペットボトルを沈めいっぱいに満たした。試に飲んでみた。ペットボトルの味がしたが、混じりけの少ない、マイルドな飲み心地だった。

 


こんなクリパスの水を飲んでみた。

 氷河の氷でウイスキーのオンザロック。天気は良いし爽快、いうことなし。グループの一人が誕生日ということで、みんなでハッピバースディを歌って祝う。シャンパンで乾杯し、ワインもチャンポンする。

 氷上トレッキングからの帰りは林の中を抜けるコースになっている。 木々の間から青白く光る氷河をみるのは何か幻想的で不思議な気分になる。

  今日でペリト・モレノ氷河ともお別れ。氷河をたっぷりと堪能することができた。

 

   
photo by miura 2014.2
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