デビッド・ロバーツのエジプトの絵
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デビッド・ロバーツの絵
エジプト・カイロのホテルで、すばらしいスフィンクスの絵をみた。首まで砂に埋もれたスフインクスの向こうに赤く大きな夕日が沈んでいこうとしている風景を描いたものだ。作者はデビッド・ロバーツDavid
Roberts。次のアスワンのホテルの部屋にもデビッド・ロバーツの何枚かの絵が飾ってあった。驚いたことにスフィンクスは首まで砂漠に埋もれているではないか。ラクダに乗った兵隊と思われる人たちも、真っ赤な夕日に映える劇的なスフィンクスに感動している。エジプトに来て、この絵に出合えてよかった。
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上のロバーツの絵と同じ位置からのショットをねらったが、撮影場所の高台には登れなかった。 |
その絵はエジプトの風景とマッチして旅情を誘い、旅人には妙に感動的なものだった。
さっそく「DAVID ROBERTS EGYPT and the HOLY LAND」『A journey in Egypt』という彼の画集を求めた。
デビット・ロバーツはスコットランド・エジンバラに1796に生まれた。早くから画家としての才能を発揮して、フランス・ベルギー・ドイツなどを旅行して絵を描いた。とりわけスペインが気に入って多くの都市を回ってスケッチなどをし、画集として出している。さらに1838〜9年にかけてエジプトに11か月滞在し、各地の遺跡を回って多くの作品を残している。この画集はその時の作品である。
そこには160年前のエジプトの風景と遺跡と人々が描かれている。特に注意を引いたのはスフィンクスが首まで砂に埋まっているように、多くの遺跡が半分砂に埋もれていることである。現在の写真の遺跡は、砂は取り除かれ、崩れた遺跡は残ったり掘り出されたりした石を使ってきれいに再建され、整形されている。その違いが気になって仕方がない。旅人にはロバーツの絵に描かれたエジプトのほうがうれしい。 |
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ちょつと角度は違っているが、160年前のスフィンクスの夢誘う雰囲気が分かっていただけるだろうか。(ロバーツのアングルにはどこからみてもならない)
現在、修復復元されている遺跡の多くはスフィンクス状態だったことがわかる。
スフィンクスは、後ろに見えるカフラー王のピラミッド(頂上付近になぜか化粧石が残っている)への参道の入り口、あるいは守り神として造られたといわれていたが、近年の調査ではスフィンクスはピラミッドよりも古い年代に造られたようで、カフラー王のピラミッドとは関係ないようだが、何故か参道が造られていた。身体はライオン、顔はカフラー王に似せて造られているとか。
エジプトといえばスフィンクスとその背後のピラミッド群という定番イメージがある。まさしく、アブシンベル神殿のラムセス巨像とカルナック神殿の巨大な円柱と並ぶ古代エジプトの象徴のようなものだと思う。
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スフィンクスの鼻はデビッド・ロバーツの絵でも描かれていない。ガイドさんの話では、かってはあったが、兵隊たちが面白半分に小銃の的としていたために崩れてしまったのだという。
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スフィンクスは顔は人間で身体はライオンだが、顔はカフラー王に似せられて造られたといわれる。1816年に砂の除去作業が始まったが挫折し、再度の挑戦で、1886年にようやく除去された。第二ピラミッドであるカフラー王のピラミッドを守るための腹ばいになったライオンが姿を現した。
残念なことにスフィンクスの鼻つぶれてしまっている。
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1864年幕府による第二次遣欧使節の一行の写真。 ホテルのロビーに掛けてあった。チョンマゲ刀とスフィンクスの組み合わせはシュール。 |
カイロにあるホテルのロビーで見た面白い写真。1864年幕府による第二次遣欧使節の一行の写真である。フランス国軍艦で上海、エジプトを経由してフランスへ行った。写真の左下に撮影者であるA.Beatoのサインがある。どうも日本人観光客へのサービスのようだ。
スエズ運河は1869年11月に開通したが、彼らはスエズ運河をまだ使えなかった。陸路でギザ、カイロを経由して地中海に抜けたようだ。
34人のちょんまげに刀を2本さした侍たちが誇らしげにスフィンクスの首のあたりで記念撮影をしている。彼らはスフィンクスを見て何を思ったのだろう。ちょんまげ侍とスフィンクスの取り合わせがとても奇妙だが、日本の侍もやるものだなと思う。
デビット・ロバーツがスフィンクスを描いたのは1838年で、それから26年経っだ時代の写真だがスフィンクスはまだ砂に埋まったままだ。スフィンクスは歴史の中で何度も砂に埋もれては掘り出されてきたようだ。現在は、掘り出されて世界からの観光客の好奇の眼にさらされている。今度スフィンクスが砂に埋もれるのはいつの頃になるのだろう。
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デビッド・ロバーツのメムノンの巨像。ナイル川が増水するとこの巨像も水に浸かった状態であったことがわかる。 |
メムノンの巨像。現在修復中。
ルクソールはナイル川の東岸にあり、生者の生活の街。西岸は太陽の沈む来世、王家の谷のある死者の場所。メムノンの巨像は、ナイル川と王家の谷の間に広がるテーベ平原に建っている。神殿に通じる参道ににあったという。この壊れた巨像は風が吹くと不思議な歌をうたうのだという。左の絵ではナイル川が増水するとこの巨像も水に使った状態であったことがわかる。住民たちは遺跡の一部と思われる石を、掘り起こそうとしているのだろうか。 |
photo by miura 2008.2
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