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PISA型学力についてのノート

2007.12 三浦@int


1.PISA調査の概要

2.2003・2006年調査
の概要


3.数学的リテラシー
の概要


4.読解力の概要


5.科学的リテラシー
の概要


6.問題解決能力の
概要


7.PISA型読解力に
ついて


8.読解力向上プロ
グラム


9.数学リテラシー
について






1.PISA調査の概要 


 「生きるための知識と技能」(国立教育政策研究所)2003・2006年調査国際結果報告書による

 OECD(経済協力開発機構)のPISA調査は、日本で言えば高校1年生を対象としたテストで、2003年度では41カ国の参加があった。「知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかどうかを評価」するもので、国際的な学力評価として日本でも「新しい学力」の方向として近年注目されてきた。
 PISA調査(Programme for International Student Assessment)とは、OECD(経済協力開発機構)が1988年よりはじめた事業である。OECDは、「経済成長」、「開発途上国援助」及び「自由かつ多角的な貿易の拡大」といった国際的な経済協力を目的としている。「教育・人材養成は労働市場や社会、経済と密接に関連していることから、OECDは幼児教育から成人教育までの広い範囲で、将来を見据えた教育政策のあり方を提言している。」 (「生きるための知識と技能」より)
 PISA調査の結果が大きな影響力をもつようになったのは、PISA調査が各国の教育政策の企画立案に資する調査であり、自国の教育政策の改善や見直しを図るための客観的なデータや情報を提供することに主眼においているからである。

 「PISA的学力」(学習到達度調査)の特徴は次の5項目で表現できる。

@知識や技能を実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかどうかを評価。学校カリキュラムには関わらない。
A図表・グラフ・地図などを含む文章(「非連続型テキスト」という)が重視され、出題の約4割を占める。
B「選択式」を中心にしながらも「自由記述形式」の出題が約4割を占める。
C記述式では、答えを出すための「方法や考え方を説明する」ことが求められる。
D読解力として、「情報の取り出し」・「解釈・理解」・「熟考・判断」、そして自分の「意見を表現する」ことが求められる。テキストの「内容」だけでなく「構成や形式」についても問われる。

 PISA調査は、学校のカリキュラムをどの程度習得しているかを評価するものではなく、「知識や経験をもとに、自らの将来の生活に関する課題を積極的に考え、知識や技能を活用する能力があるか」をみるもので、「学校の教科で扱われる知識の習得を超えた部分まで評価しようとする」ものである。つまり、各国のカリキュラムに依存せずに、それを超えて出題される。
 もともとPISA調査は、「国際的に見て自国の教育の現状がどのような水準にあるのか、その位置づけを示す指標への要望」からスタートしている。「国として教育政策の成果を評価する必要」からその手段として期待されてきたものである。
 PISA調査の目的が、「経済成長」、「開発途上国援助」及び「自由かつ多角的な貿易の拡大」という目的のための教育・人材養成ということにあるにしても、このような「活用」的、実践的な能力は、従来のカリキュラム的・教科的学力や「新しい学力」「生きる力」的学力の両方の学力観にはない、何か新しいものを感じさせる。PISA的学力は、文部科学省の「新しい学力」「生きる力」的学力(課題を発見し、解決する力)に近いが、もっと具体的に「実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるか」を評価するとしている。

 2007年4月に行われた文部科学省の全国学力調査は、国語・数学の問題は「知識」の「A」と「活用」の「B」の2種類に分かれる。
 「A」は基礎的な知識の達成度を評価するもので、いわば単元別の基礎的な出題、正答率は70〜80%の比較的簡単な出題となっている。「B」は「活用」で、PISA調査の「実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるか」の出題傾向を非常に意識した出題となっている。「新しい学力」=「PISA的学力」の評価を直接には公言していないが、「B」出題を見る限り、文部科学省の全国学力調査は「新しい学力」=「PISA的学力」をねらいにしているといえるだろう。
 文部科学省の全国学力調査のA=知識は、学校での通常の中間・期末テストのやさしい出題と大差ないが、B=活用は「PISA的学力」の出題傾向を踏まえて出題されている。今後、学力観点の「思考・判断」に関わる「B=活用」=「PISA的学力」が学校教育の新傾向テスト問題として意識されていくことが予想される。それに伴って、都道府県や市区町村レベルでの学力調査もこれらの新傾向を取り入れていくものと思われる。「活用」的学力は、OECDの「PISA的学力」を踏まえたものであり、国際的に共通して受け入れられた学力観であるだけに、もうひとつの学力観として定着していくだろう。

 PISAの「活用」的学力は、観点別学習状況でいう4つの学力(関心・意欲・態度/思考・判断/技能・表現/知識・理解)とどうかかわってくるのか、よくわからないところがある。
 学校教育法30条の2に次のようにある。
 「前項の場合においては、生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない。 」
「知識及び技能」を「習得」させ、それを「活用」して課題を解決するために必要な「思考力、判断力、表現力その他の能力」をはぐくむ、としている。課題解決に「活用」することを通して「思考力、判断力、表現力」をはぐくむというかたちで「活用」力を「思考力、判断力、表現力」にむすびつけている。

 学習指導要領では、「自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力」「基礎的・基本的内容の徹底」「個性を生かす教育」の3つを新しい学力観として特徴づけている。指導要録では、新しい学力観にのっとって観点別学習状況(関心・意欲・態度/思考・判断/技能・表現/知識・理解)についての到達度評価(目標に準拠した評価)がおこなわれることになっている。だが、新しい学力観の観点別評価は、到達度絶対評価で行われることになっており、この評価法は競争原理による評価を排している。そのことから、いまひとつ分かりにくく、学習目標に到達しているということが、だから良い成績なのかそれほどでもないのか、分かったようで実感としてはよく分からないところがある。保護者からはあまり評価されていないようだ。
 それに対して、PISA調査の結果は参加国の成績順位が公表されることから分かりやすく、新聞などでも大きくとりあげられている。こういう分かりやすい評価も、分かりにくい観点別到達度評価と平行して採用されることに意味があるのかも知れない。「活用」的学力も到達目標が設定しにくい学力であるだけに、順位や分布などの相対的評価が併用されることになるだろうか。
ともかく、文部科学省もマスコミもそして世の父母も、PISA学力調査での順位には大変興味をもっていることはまちがいない。

文部科学省 2003年調査国際結果の要約
PISA(OECD生徒の学習到達度調査)2003年調査 

 以下にPISA型学力といわれるものの内容をまとめてみた。

 また、PISA型学力は何を目指しているのか。あるいはOECDが考える国際標準の学力とは何なのか。「キー・コンピテンシー『The Definition and Selection of KEY COMPETENCIES:THeoretical & Conceptual Foundation』=DeSeCo (コンピテンシーの定義と選択:その理論的・概念的基礎)という資料がある。これについてもまとめてみたので参照されたい。
 同様に学力の向上にかんする、OECD
教育研究革新センターが編集した「形成的アセスメントと学力」(明石書店)により、「形成的アセスメント」といわれるものについてまとめているので、あわせて参照されたい。

 


2.PISA調査の概要

対象年齢 (2012年調査)
 

義務教育終了段階 15歳 高等学校1年生
全国の144学科、約4,700人の生徒が参加(2003年調査)
全国の191校(学科)、約6,400人の生徒が参加(2012年調査)

2000年調査参加国:32か国 (OECD加盟28か国、非加盟4か国)
2003年調査参加国:41か国 (OECD加盟30か国、非加盟11か国)
2006年調査参加国:57か国 (OECD加盟30か国、非加盟27か国)
2009年調査参加国:65か国 (OECD加盟34か国、非加盟31か国)
2012年調査参加国:65か国 (OECD加盟34か国、非加盟31か国)

世界65か国、51万人参加 (2012年調査)

  義務教育修了段階の15歳児が持っている知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかどうかを評価。(特定の学校カリキュラムがどれだけ習得されているかをみるものではない。)
調査内容 数学的リテラシー
読解力
科学的リテラシー
(問題解決能力 2003年)
  2003年は、数学リテラシーが中心分野
2006年は、科学的リテラシーが中心分野
2009年は、読解力が中心分野
2012年は、数学的リテラシーが中心分野
2015年は、科学的リテラシーが中心分野
日本の結果 2000・2003・2006(・2009・2012年追加)年の3回の成績比較

(1)科学的リテラシー

 
 
2000年
2003年
2006年
2009年
2012年
全参加国中の順位
2位
2位
6位
5位
4位
OECD加盟国中の順位
2位
2位
3位
2位
1位
(2)読解力
 
 
2000年
2003年
2006年
2009年
2012年
全参加国中の順位
8位
14位
15位
8位
4位
OECD加盟国中の順位
8位
12位
12位
5位
1位
(3)数学的リテラシー
 
 
2000年
2003年
2006年
2009年
2012年
全参加国中の順位
1位
6位
10位
9位
7位
OECD加盟国中の順位
1位
4位
6位
4位
2位
 
 

3.数学的リテラシーの概要 (2003年調査)

 「数学的リテラシーとは、数学が世界で果たす役割を見つけ、理解し、現在及び将来の個人の生活、職業生活、友人や家族や親族の社会生活、建設的で関心をもった思慮深い市民としての生活において確実な数学的根拠にもとづき判断を行い、数学に携わる能力である。」

(1)数学的な内容
 「量」「空間と形」「変化と関係」「不確実性」の4領域

(2)数学的プロセス(能力クラスター)
 生徒は実世界の文脈に基づく問題に取り組み、数学的探求が行えるように問題の特徴を見つけ出し、 関連する数学的な能力を活発に使い、問題を解決する。そのためには多段階の「数学化」のプロセスに携わらなければならない。
 数学化」のプロセスには、次の8つの能力が関わっている。
  思考と推論・論証・コミュニケーション・モデル化・問題設定と問題解決
  表現・記号による式や公式を用い演算を行う・テクノロジーを含む道具を用いること

 この認知的活動は、次の3つの能力クラスターにより説明される。(下ほど上位概念)

再現クラスター 知識の再現を要する問題を解く能力
関連付けクラスター 拡張・発展された場面において、手順がそれほどはっきりと決まっていない問題を解く能力。
熟考クラスター 洞察・反省・創造性

(3)数学が用いられる状況

実生活で生徒が遭遇するような状況。

私的 生徒の日々の活動に直接関係する文脈
教育的 生徒の学校生活に現れるような文脈
職業的 職業の場面に現れるような文脈
公共的 生徒が生活する地域社会における文脈
科学的 より抽象的な文脈で、技術的な過程、論理的な場面、明らかな数学的な問題についての理解に関連する。

●問題内容と出題形式 54ユニット・85題

私的
公共的
職業的
教育的
科学的
18題(21%)
29題(34%)
5題( 6%)
15題(18%)
17題(20%)

空間と形
変化と関係
不確実性
23題(27%)
20題(24%)
22題(26%)
20題(24%)
再現
関連付け
熟考

26題(31%)
40題(47%)
19題(22%)
選択形式
答えを書く問題

求め方や考え方を説明する自由記述
28題(33%)
36題(42%)

21題(25%)

   

(4)数学的リテラシー平均得点の国際比較(2003年)

全体 「量」領域 「空間と形」領域 「変化と関係」領域 「不確実性」領域
6位
11位
2位
7位
9位

2003年調査では6位だったが、2006年調査では10位に下がったことが報告されている。
2003年調査で成績が良かった国は上から順に、香港・フィンランド・韓国・オランダ・リヒテンシュタイン・日本・カナダ・ベルギー・マカオ・スイス・オーストラリアである。
2006年調査では、成績が良かった国は上から順に、台湾・フィンランド・香港・韓国・オランダ・スイス・カナダ・マカオ・リヒテンシュタイン・日本・ニュージーランド・ベルギー・スイスオーストラリアである。




4.PISA型読解力の概要(2003年調査)

「読解力とは、自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力である。」

テキストを「連続型テキスト」と「非連続型テキスト」の二つに区分
「連続型テキスト」は通常、文章、段落で構成されています。「非連続型テキスト」には一覧表、書式、図やグラフ、表、地図、広告などの情報が含まれる。特に「非連続型テキスト」に関しては、日本の国語の授業ではあまり取り扱われない分野。

5つのプロセス
PISAでは読解力の五つのプロセスを測定している。
 (1)情報の取り出し
 (2)幅広い一般的な理解の形成
 (3)解釈の展開
 (4)テキストの文脈の熟考評価
 (5)テキストの形式の熟考評価

 特に「熟考評価」は、与えられたテキストからの情報だけではなく、テキスト外の情報、つまり自分の知識や経験などを使って内容や形式を深く理解し評価、判断していく力であり、日本の生徒があまり慣れていない部分である。テキストの「分脈・内容」だけでなく、「形式」についても「熟考評価」する能力が問われる。

●読む行為のプロセス
PISAで調査で測定したのは、次の3つの課題である。
 (1)テキストの中の「情報の取り出し」
 (2)書かれた情報から推論してテキストの意味を理解する「テキストの解釈」
 (3)書かれた情報を自らの知識や経験に関連づける「熟考・評価」

●テキストが作成される用途、状況
テキストが作成される4種類の用途につて、測定する。
 (1)私的な手紙や小説や伝記は「私的な」用途
 (2)公式の文章は「公的な」用途
 (3)マニュアルや報告書は「職業的な」用途
 (4)教科書やワークシートは「教育的な」用途

●問題内容と出題形式 全28題

連続型
非連続型

情報の取り出し
テキストの解釈
熟考・評価

私的な
公的な
職業的な
教育的な

多肢選択形式
複合的選択肢形式

求答形式
自由記述形式
短答形式
18題(64%)
10題(36%)

7題(25%)
14題(50%)
7題(25%)

6題(21%)
7題(25%)
7題(25%)
8題(29%)

9題(32%)
1題(4%)

4題(14%)
10題(36%)
4題(14%)



5.科学的リテラシーの概要(2003年調査)

 科学的リテラシーとは、「自然界及び人間の活動によって起こる自然界の変化について理解し、意思決定するために、科学的知識を利用し、課題を明確にし、証拠に基づく結論を導き出す能力」である。

科学的リテラシーの3つの側面
科学的知識・概念
物理学、化学、生物学などの各分野から選択され、
力と運動、生命の多様性、生理的変化などの多くのテーマから導かれる。

科学的プロセス
プロセス1:科学的現象を記述し、説明し、予測すること 17題
プロセス2:科学的探究を理解すること
プロセス3:科学的証拠と科学的結論を解釈すること

科学的状況・文脈
生活と健康(12題)、地球と環境(12題)、技術(11題)について、
日常生活におけるさまざまな状況で科学を用いること。
日本はフィンランドと並んでトップ。
公表はヒツジのクローンと昼間の時間の2題のみ。

 



6.問題解決能力の概要(2003年調査)

 「問題解決能力とは、問題解決の道筋が瞬時には明白でなく、応用可能と思われるリテラシー領域あるいはカリキュラム領域が数学、科学、または読解のうちの単一の領域だけには存在していない、現実の領域横断的な状況に直面した場合に、認知プロセスを用いて、問題に対処し、解決することができる能力である。」

 得点は、韓国・フィンランド・香港に続いて4位。


7.PISA型読解力とはどういうものか

 PISA出題の特徴として、公表されたテスト問題が通常実施している学力テストとは大きく違ったタイプのものであることから、「PISA型読解力」とか「PISA型学力」という新語が登場するほどに波紋が広がった。今春実施の文科省の全国学力調査でも、知識を問うA問題の他に、B=知識の活用を試す問題が用意され、また次期学習指導要領の改訂にも影響が及ぶことが予想されている。

 文科省の国語の学力調査の「B」ではグラフや表やチラシなど非連続型テキストを扱った問題など、PISA調査を意識した問題が出された。「PISA調査の問題と比べると、問いの内容がやや表面的な感じは受けますが、これまでこういう問題はあまり出題されていませんでしたので、今回はこのぐらいの問題にしたのだと思います」という指摘もある。
 中学のB問題の大問は、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を題材に、最後の段落があったほうがいいか、ないほうがいいかを吟味する問題。これは2000年のPISA調査問題の中で、日本の解答者の「無答率」が高かったために大きな衝撃を与えた『贈り物』問題に影響を受けたものと思われる。『贈り物』問題の最後の問いは、『贈り物』という文の最後がこのような文で終わるのが適切か否かを、物語の内容と関連させて説明させるというもの。つまり文章の内容・分脈だけでなく、表現の形式・文章の構成法についても問われた。
 今回の『蜘蛛の糸』に関する問いが「場面の有無の吟味」であるのに対して、PISA調査での『贈り物』に関する問いは「表現効果の吟味」であるという違いが指摘されている。これは、日本ではまだ、文学「作品の表現を批判吟味する」ことに抵抗があることを配慮したものといわれている。今後の国語科教育においては「文学を鑑賞するだけでなく、批判的に吟味することにも取り組んでほしい」というメッセージがこめられている、といわれている。

 PISA調査は「知識や経験をもとに、自らの将来の生活に関する課題を積極的に考え、知識や技能を活用する能力があるか」をみるもので、「学校の教科で扱われる知識の習得を超えた部分まで評価しようとする」ものである。これは長期にわたる学習の成果を、ある種の応用力・活用力として測定するテストであるともいえる。それに比べ学校で行われる中間・期末テストや標準学力検査は一定の期間ごとの学習内容の達成度・定着度を測定するテストであり、学年別に作成されるのが普通。

 次のような見方もある。「従来の日本の学力調査では、内容面の側からアプローチして作成されたものが多かった。「内容面」と「能力面」のどちらを主として考えていくかを、問題作成にあたり整理する必要がある。教育課程実施状況調査は、内容や領域をカバーする形で問題作成されているが、全国的な学力調査は、児童生徒の到達度を把握するとの趣旨であることを考慮すれば、能力面の方に問題作成の基本原則をもっていくことがよいのではないか。」
 しかし、読解力における「能力」の評価は、作問が難しいだけでなく、採点にも多くの困難が伴う。読解力の能力評価は難しいが、それだけに取り組みがいのある課題だともいえる。

 「熟考・判断」にかかわる出題は「自由記述式」になる場合が多いのも特徴である。採点者によって採点結果がバラつく恐れがある。明確でよく練られた「採点基準」を用意することは大前提となる。正解や誤答の類型的なパターンだけでなく、(1)誤字・脱字、(2)てにをはの間違い、(3)改行した場合の文字数への影響、(4)禁則処理をしないで、句読点を次の行の一番最初に繰りこした場合、(5)表現の多様さへの配慮 等々の採点基準の統一化が不可欠である。

 PISAによれば、「読解力とは、自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力である。」 書かれたテキストから、「情報を取り出し」、「理解・解釈」し、「熟考・判断」し、自らの考えとして「表現する」能力である。この能力を的確に評価するための妥当性の高い出題と評価法もまた研究されなければならないだろう。




PISA(OECD生徒の学習到達度調査―2000年調査)

読解力の問題例

『落書き』
学校の壁の落書きに頭に来ています。壁から落書きを消して塗り直すのは、今度が4度目だからです。想像力という点では見上げたものだけれど、社会に余分な損失を負担させないで、自分を表現する方法を探すべきです。
 禁じられている場所に落書きをするという、若い人たちの評価を落とすようなことを、なぜするのでしょう。プロの芸術家は、通りに絵をつるしたりなんかしないで、正式な場所に展示して、金銭的援助を求め、名声を獲得するのではないでしょうか。
 わたしの考えでは、建物やフェンス、公園のベンチは、それ自体がすでに芸術作品です。落書きでそうした建築物を台なしにするというのは、ほんとに悲しいことです。それだけではなくて、落書きという手段は、オゾン層を破壊します。そうした「芸術作品」は、そのたび消されてしまうのに、この犯罪的な芸術家達はなぜ落書きをして困らせるのか、本当に私は理解できません。
                                        ヘルガ
 十人十色。人の好みなんてさまざまです。世の中はコミュニケーションと広告であふれています。企業のロゴ、お店の看板、通りに面した大きくて目ざわりなポスター。こういうのは許されるでしょうか。そう、大抵は許されます。では、落書きは許されますか。許せるという人もいれば、許せないという人もいます。
 落書きのための代金はだれが払うのでしょう。だれが最後に広告の代金を払うのでしょう。その通り、消費者です。
 看板を立てた人は、あなたに許可を求めましたか。求めてはいません。それでは、落書きをする人は許可を求めなければいけませんか。これは単に、コミュニケーションの問題ではないでしょうか。あなた自身の名前も、非行グループの名前も、通りで見かける大きな制作物も、一種のコミュニケーションではないかしら。
 数年前に店で見かけた、しま模様やチェックの柄の洋服はどうでしょう。それにスキーウェアも。そうした洋服の模様や色は、花模様が描かれたコンクリートの壁をそっくりそのまま真似たものです。そうした模様や色は受け入れられ、高く評価されているのに、それと同じスタイルの落書きが不愉快とみなされているなんて、笑ってしまいます。
 芸術多難の時代です。
                                        ソフィア
落書きに関する問1:この2つの手紙のそれぞれに共通する目的は、次のうちのどれですか。
A 落書きとは何かを説明する。
B 落書きについて意見を述べる。
C 落書きの人気を説明する。
D 落書きを取り除くのにどれほどお金がかかるかを人びとに語る。
落書きに関する問2:ソフィアが広告を引き合いに出している理由は何ですか。
落書きに関する問3:あなたは、この2通の手紙のどちらに賛成しますか。片方あるいは両方の手紙の内容にふれながら、自分なりの言葉を使ってあなたの答えを説明してください。
落書きに関する問4:手紙に何が書かれているか、内容について考えてみましょう。
手紙がどのような書き方で書かれているか、スタイルについて考えてみましょう。
どちらの手紙に賛成するかは別として、あなたの意見では、どちらの手紙がよい手紙だと思いますか。片方あるいは両方の手紙の書き方にふれながら、あなたの答えを説明してください。

落書きに関する問1の正答は、B

落書きに関する問2
落書きについての賛否両論の意見文を読んで、その内容について論理的な関係性を分析・解釈し、論述形式で答えさせる問題である。

落書きに関する問2の採点基準
コード 回答
正答
1
落書きと広告を比較していることを理解している。広告は落書きの合法的な一形態という考えに沿って答えている。
または:広告を引き合いに出すことが落書きを擁護する手段の一つであることを理解している。 <熟考・評価>
誤答/無答
0
不十分な答えもしくは漠然とした答え。
9
無答

落書きに関する問3
2通の手紙のどちらに賛成するか、論拠を明確にして自分の言葉で答えることを求める問題である。両方の手紙に触れて論拠を明確にしていること、自分の意見を明確に主張することが求められる。

落書きに関する問3の採点基準
コード 回答
正答
1
片方または両方の手紙の内容にふれながら意見をのべている。手紙の筆者の主張全般(落書きに賛成か反対か)や意見の詳細を説明していてもよい。手紙の筆者の意見に対して、説得力のある解釈をしていること。課題文の内容を言い換えて説明しているのはよいが何も変更や追加をせずに課題文全部または大部分を引用するのは不可。 <熟考・評価>
誤答/無答
0
自分の考えの根拠が、課題文のそのままの引用に終わっている。(「 」で囲ってあってもなくてもよい)または:不十分な答えもしくは漠然とした答え。
9
無答

落書きに関する問4
手紙の内容とスタイルについて考えた上で、どちらの手紙がよい手紙であるかを論じさせる問題である。本文に書かれていることを根拠にして、説得力のある意見を述べることが求められている。

落書きに関する問4の採点基準
コード 回答
正答
1
片方または両方の手紙のスタイルについて意見を述べている。文体、議論の組立て、議論の説得力、論調、用語、読み手に訴える手法などの特徴を説明している。「よい議論」と述べている場合、それについての立証が必要である。
誤答/無答
0
筆者の主張に対する賛成または反対の観点から判断を下している。または単に内容を言い換えている。または:十分な説明なしに判断を下している。
9
無答

 


8.読解力向上プログラムについて

(たたき台) 文部科学省サイトより

 PISA調査は,読解の知識や技能を実生活の様々な面で直面する課題においてどの程度活用できるかを評価することを目的としており,これは現行学習指導要領がねらいとしている「生きる力」「確かな学力」と同じ方向性にある。また,学習指導要領国語では,言語の教育としての立場を重視し,特に文学的な文章の詳細な読解に偏りがちであった指導の在り方を改め,自分の考えを持ち論理的に意見を述べる能力,目的や場面などに応じて適切に表現する能力,目的に応じて的確に読み取る能力や読書に親しむ態度を育てることが重視されており,これらはPISA型「読解力」と相通ずるものがある。

 PISA型「読解力」は,次のように定義されている。
 「読解力とは、自らの目標を達成し,自らの知識と可能性を発達させ,効果的に社会に参加するために,書かれたテキストを理解し,利用し,熟考する能力である。」
 「読解力の概念について、文章の読解と理解といった内容を超え、様々な目的のために書かれた情報を理解し、利用し、熟考することを含む」

 調査結果を,正答率や無答率を基にして分析すると,特に,読解プロセスにおいて「テキストの解釈」「熟考・評価」に,出題形式において「自由記述(論述)」に課題がある。出題形式では,自由記述が約4割を占めている。

 「読解力」とは、文章や資料から「情報を取り出す」ことに加えて、「解釈」「熟考・評価」「論述」することを含むものであり、以下のような特徴を有している
 (1)テキストに書かれた「情報の取り出し」だけはなく,「理解・評価」(解釈・熟考)も含んでいること。
 (2)テキストを単に「読む」だけではなく,テキストを利用したり,テキストに基づいて自分の意見を論じたりするなどの「活用」も含んでいること。
 (3)テキストの「内容」だけではなく,構造・形式や表現法も,評価すべき対象となること。
 (4)テキストには,文学的文章や説明的文章などの「連続型テキスト」だけでなく,図,グラフ,表などの「非連続型テキスト」を含んでいること

 注目すべき点は、前述の「読解力向上プログラム」でも日本の生徒が弱いと指摘されている「解釈」「熟考評価」「さまざまな文章や資料の読解(非連続型テキスト含む)」ということになる。これらの能力を今後鍛えていこうというのが「読解力向上プログラム」の主旨といえる。

 読むテキストには,「連続型テキスト」と呼ばれている文章で表されたもの(物語,解説,記録など)だけではなく,「非連続型テキスト」と呼ばれているデータを視覚的に表現したもの(図,地図,グラフなど)も含まれている。加えて,教育的内容や職業的内容,公的な文書や私的な文書など,テキストが作成される用途,状況にも配慮されるなど,テキストの内容だけではなく,その構造・形式や表現法も,評価すべき対象となっている。

 また,読む行為のプロセスとしては,単なる「テキストの中の情報の取り出し」だけではなく,書かれた情報から推論して意味を理解する「テキストの解釈」,書かれた情報を自らの知識や経験に位置付ける「熟考・評価」の3つの観点を設定し,問題が構成されている。
さらに,出題形式は,選択肢問題のみならず,記述式問題も多く取り入れられており,テキストを単に読むだけではなく,テキストを利用したり,テキストに基づいて自分の意見を論じたりすることが求められている。

 「読解力(読解リテラシー)」では、日本は2回の調査とも2位グループではあるが、順位で見ると00年から03年で8位から14位に下がっている。
 この結果を受け、文部科学省は05年12月に「読解力向上プログラム」を発表し、PISA型読解力の向上を図るための指針を示した。「三つの重点目標」は次のようになる。
目標(1)テキストを理解・評価しながら読む力を高める取り組みの充実
目標(2)テキストに基づき自分の考えを書く力を高める取り組みの充実
目標(3)さまざまな文章や資料を読む機会や、自分の意見を述べたり書いたりする機会の充実

 文部科学省や教育委員会の取組 ‐5つの重点戦略‐
【戦略1】 学習指導要領の見直し
【戦略2】 授業の改善・教員研修の充実
【戦略3】 学力調査の活用・改善等
【戦略4】 読書活動の支援充実
【戦略5】 読解力向上委員会(仮称)


9.数学リテラシーの出題例


 「数学的リテラシーとは、数学が世界で果たす役割を見つけ、理解し、現在及び将来の個人の生活、職業生活、友人や家族や親族の社会生活、建設的で関心をもった思慮深い市民としての生活において確実な数学的根拠にもとづき判断を行い、数学に携わる能力である。」
 PISA調査は、学校で習うカリキュラムから離れて、「知識や経験をもとに、自らの将来の生活に関する課題を積極的に考え、知識や技能を活用する能力があるか」をみるものとしている。単なる知識や技能の適用は、PISA調査でも「再現」能力としてあつかわれているが、再現能力からさらに現実の課題や問題を解くために「活用」する能力を評価することに重点がある。
「何のために数学を勉強するのか」という課題に正面からこたえようとする出題になっている。


数学的リテラシーの問題例  2000年調査

レーシングカーの速度
下のグラフは、1 周3km の平らなサーキットで、レーシングカーの2 周目の速度 がどのように変化したかを示したものです。
間1:レーシングカーの速度
スタートラインから、もっとも長い直線コースが始まる地点までの、およその距離
は次のうちどれですか。

A 0.5km    B 1.5km    C 2.3km    D 2.6km
問2:レーシングカーの速度
2 周目で、速度が最低を記録した地点は、次のうちどこですか。

A スタートライン    B およそ0.8km 地点    C およそ1.3km 地点
D サーキットの中間地点
間3:レーシングカーの速度
2.6km 地点から2.8km 地点の間のレーシングカーの速度について、どんなことが言
えますか。次のうちから一つ選んでください。

A レーシングカーの速度は一定である。
B レーシングカーの速度は増加している。
C レーシングカーの速度は減少している。
D レーシングカーの速度は、このグラフから求めることができない。
間4:レーシングカーの速度
下の図は、5 種類のサーキットを表しています。前に示したグラフのレーシングカ
ーが走行したのは、どのサーキットですか。次のうちから一つ選んでください。

為替レートの問題 2003年調査
シンガポール在住のメイリンさんは,交換留学生として3 ヶ月間,南アフリカに留学する準備 を進めています。彼女は,いくらかのシンガポールドル(SGD)を南アフリカ・ランド(ZAR) に両替する必要があります。
為替レートに関する問1
メイリンさんが調べたところ,シンガポールドルと南アフリカ・ランドの為替レートは次のとお りでした。
1 SGD = 4.2 ZAR
メイリンさんは,この為替レートで,3000 シンガポールドルを南アフリカ・ランドに両替しま した。
メイリンさんは南アフリカ・ランドをいくら受け取りましたか。

答え:........................................................
為替レートに関する問2
3 ヵ月後にシンガポールに戻る時点で,メイリンさんの手持ちのお金は3,900ZAR でした。彼女 は,これをシンガポールドルに両替しましたが,為替レートは次のように変わっていました。
1 SGD = 4.0 ZAR
メイリンさんはシンガポールドルをいくら受け取りましたか。

答え:........................................................

為替レートに関する問3
この3 ヶ月の間に,為替レートは,1 SGD につき4.2 ZAR から4.0 ZAR に変わりました。
現在,為替レートが4.2 ZAR ではなく4.0 ZAR になったことは,メイリンさんが南アフリカ・ランド をシンガポールドルに両替するとき,彼女にとって好都合でしたか。答えの理由も記入してください。

為替レートに関する問1
問題形式:短答形式
包括的アイディア:量
状況:公共的
能力:再現 
正解 12,600ZAR
日本の正答率79%、OECD平均は80%。

為替レートに関する問2
問題形式:短答形式
包括的アイディア:量
状況:公共的
能力:再現 
正解 975SGD
日本の正答率74%、OECD平均は74%。

為替レートに関する問3
問題形式:自由記述形式
包括的アイディア:量
状況:公共的
能力:熟考 
日本の正答率43%、OECD平均は40%。
日本の無答率22%  OECDの無答率17%

為替レートに関する問3の採点基準

コード 回答
正答
11
正解 「はい」で、正しい説明がなされている。
・はい。1SGDの為替レートが下がったことにより、メイリンは手持ちの南アフリカ・ランドに対して、より多くのシンガポールドルを受け取った。
・はい。1ドルが4.2ZARであれば、929ZARになる。
・はい。メイリンは、1SGDあたり4.2ZARを受け取っていたが、現在は1SGDを手に入れるために4.0ZARを払えばよいから。
・はい。1SGDあたり0.2ZAR安いから。
・はい。4.2で割ると4で割ったときより値が小さくなるから。
・はい。為替レートが下がらなければ、受け取る額が約50ドル少なくなったので、メイリンには好都合である。
誤答/無答
01

「はい」だが、説明が記入されていない。または説明が不適切である。
・はい。為替レートが安いほうがよい。
・はい。ZARが下がるとSGDに両替したとき受け取る金額が増えるので、メイリンには好都合である。
・はい。 メイリンには好都合である。

02

その他の答え
99
無答

 

盗難事件に関する問題  2003年調査

盗難事件
あるTVレポーターがこのグラフを示して、「1999年は1998年に比べて、盗難事件が激増しています」といいました。

年間の盗難件数

このレポーターの発言は、このグラフの説明として適切ですか。適切である、または適切でない理由を説明してください。

 

問題形式:自由記述形式
包括的アイディア:不確実性
状況:公共的
能力:関連付け

盗難事件関する問の採点基準
コード 回答
完全正答(2点)
21
適切ではない。グラフのごく一部が示されているにすぎないという事実に着目している。
・適切ではない。グラフの全体が表示されるべきである。
・グラフ全体が示されれば、盗難事件の増加はわずかな増加にすぎないことが分かるため、グラフの適切な解釈だとは思えない。
・適切でない。このレポーターはグラフの先端だけ見たが、0〜520件までの全体を見れば、それほど増加していない。
・適切でない。グラフをみると大きく増加しているように見えるが、数値を見ればそれほど増加していない。
22
適切ではない。割合またはパーセントの増加に対する正しい説明をしている。
・適切でない。全体の500件にたいして10件の増加は急激な増加ではない。
・適切でない。パーセントにすればその増加はおよそ2%にすぎない。
・適切でない。8件の増加は1.5%であり、多いとはいえないと思う。
・適切でない。今年の増加は8〜9件にすぎず、507件に比べると大きくない。
23
判断には時系列データが必要だとする答え
・激増かどうかは言い切れない。1997年の数が1998年と同じなら、1999年に大きく増加したといえるかもしれない。
・「激増」とは何か、わからない。増加が大きいか小さいかは、少なくとも変化が2つ以上ないと、考えられない。
部分正答(1点)
11
適切ではない。ただし、説明が詳細ではない。
盗難件数の実数の増加のみに着目し、全体の件数と比較していない。
・ 適切ではない。10件の盗難事件が増えたにすぎない。「増加」という言葉は盗難件数の増加の実状を説明していない。増加はおよそ10件にすぎず、これを「増加」とは言わない。
・508件から515件への増加は大きな増加ではない。
・適切ではない。8〜9件は大きな量ではない。
・多少は増えた。507件から515件へは、増加ではあるが激増ではない。
[注:グラフの目盛りが明瞭でないことから、増加の実数の読み方は5件から15件まで認める。]

12

適切ではない。方法は正しく、細かな計算ミスがある答え
・方法・結論とも正しいが、増加率を0.03%とした答え
誤答/無答(0点)
01
適切ではない、不十分または誤った説明。
・賛成できない
・このレポーターは「激増」というべきではなかった。
・適切でない。TVレポーターは大げさに言う傾向がある。
02
適切である。グラフの見かけに重点を置いていて、盗難件数が2倍になったと指摘している。
・適切。グラフの高さが2倍になっている。
・適切。盗難件数 がほぼ2倍になっている。
03
適切。説明なし、またはコード02以外の説明。

04

その他の答え
9
無答

日本の完全正答反応率 11.4%、OECD平均は  15.4%。
日本の部分正答反応率 35.4%、OECD平均は  28.1%。
日本の無答率       14.4%、OECDの無答率 15.0%。

日本は、完全・部分正当率ではOECD平均よりは高いが、トップグループに入る出来ではない。結論は正しくても、結論を導くための理由を資料を正しく読んで説明するのが弱いといえるようだ。

歩行に関する問題 2003年調査

歩行
写真
 上の写真は、ある人が歩いた足跡を示しています。歩幅pは「左右の足跡のカカトからカカトまで」の距離とします。
 男性の場合、nとpのおよその関係は、公式 n/p=140で表せます。
 ただし、
  n=1分間の歩数
  p=歩幅(m)

歩行に関する問1
 春夫さんの歩数は1分間に70歩です。この公式を春夫さんの歩行に当てはめると。春夫さんの歩幅はどれくらいですか。どのように考えたのかも示してくだせさい。

歩行に関する問2
 博さんは自分の歩幅が0.80mであることを知っています。公式を博さんの歩行に当てはめます。
 博さんの歩く速度は1分間当たり何mか、また1時間当たり何kmかも求めてください。
どのように考えたのかも示してください。


歩行に関する問1

出題形式:自由記述形式
包括的アイディア:変化と関係
状況:私的
能力:再現
歩行に関する問1の採点基準
コード 回答
完全正答(2点)
2
0.5mまたは50cmまたは1/2(単位はなくても可)
・70/p=140
 70=140p
 p=0.5
・70/140
部分正答(1点)
1
公式に正しく代入しているが、答えが誤り、または答えを出していない。
・70/p=140 [公式に数値を代入したのみ]
・70/p=140
 70=140p
 p=2 [代入は正しいが、計算結果が誤り]
または、
公式を正しく変形して、p=n/70にしたが、その後の作業が正しくない。
誤答/無答(0点)
0
その他の答え
・70cm
9
無答

         完全正答  部分正答  誤答   無答
日本      40.9(%)    27.9     12.9    18.3     
ODBC平均   36.3(%)    21.8     20.9    21.0

歩行に関する問2
出題形式:自由記述形式
包括的アイディア:変化と関係
状況:私的
能力:関連付け

歩行に関する問2の採点基準
コード 回答
完全正答(3点)
31

分速何メートル、時速何メートルともに正解(単位は不要)
・n=140×0.8=112
 博さんは1分当たり 112×0.8m=89.6m 歩く。
 速度は1分当たり 89.6m。
 したがって、時速 5.38kmまたは 5.4km。
分速・時速とも正解であれば計算過程の有無を問わない。概数による誤差は、可(例 分速90m、時速 5.3km(89×60))
・89.6、5.4
・90、5.376km/時
・89.8、5,376m/時 [注記:時速について単位を付していない答えは、コード22とすること]
【注 km/時なら単位不要(間に書いてあるので) m/時で単位をつけていないとコード22】

部分正答(2点)
21
コード31と同様だが、歩数を分速(メートル)に換算するための0.8を掛けていない(例 毎分112m、時速6.72km)。
・112、6.72km/時
22
分速(89.6m)は正しいが、時速(キロメートル)への換算が誤っている、または抜けている。
・89.6、時速8,960k.
・89.6、5376
・89.6、53.76
・89.6、0.087km/時
・89.6、1.49km/時
23
方法は正しい(明記されている)が、小さな計算間違いがあり、コード21またはコード22に該当しないもの。答えは2つとも誤り。
・n=140×0.8=1120;1120×0.8=896.よって分速896m、時速53.76km。
・n=140×0.8=116;116×0.8=92.8、分速92.8m->時速5.57km。
24
時速5.4kmのみ答えて、分速89.6を答えていない(途中の計算もしていない)。
・5.4
・5.376km/時
・5,376m/時
部分正答(1点)
11

n=140×0.8=112とし、その後がない、またはこの観点で誤ったやり方をしている。
・112
・n=112、0.112km/時
・n=112、1120km/時
・分速112m、時速504km

誤答/無答(0点)
00
その他の答え
99
無答

         完全正答  部分正答  誤答   無答
日本      18.2(%)    20.2     24.1    30.7     
ODBC平均   8.0(%)     9.0     24.4    38.7

10.科学的リテラシーの出題例 (2003年調査)

 科学的リテラシーとは、「自然界及び人間の活動によって起こる自然界の変化について理解し、意思決定するために、科学的知識を利用し、課題を明確にし、証拠に基づく結論を導き出す能力」である。

昼間の時間

次ぎの文章を読んで、以下の問に答えてください。
2002年6月22日の昼間の時間

きょうは、北半球では昼間が最も長い日[夏至]だが、オーストラリアでは昼間が最も短い日[冬至]にあたる。

 オーストラリアのメルボルン(*)では、日の出が午前7時36分、日の入りが午後5時08分で、昼間の時間は9時間32分になる。

南半球で1年のうち昼間が最も長い日と予想される12月22日と、きょうの昼間の字間を比較してみよう。

 

メルボルンでは12月22日は、日の出が午前5時55分、日の入りが午後8時42分で、昼間の時間は14時間47分になる。

天文学会のP・ブラホス会長の説明によると、北半球でも南半球でも、昼間の時間が季節によって変化するのは、地球が約23°傾いていることと関係がある。

(*)メルボルンは、南緯約38°に位置するオーストラリアの都市である。

昼間の時間に関する問1
地球に昼と夜がある理由を正しく説明している文は、次ぎのうちどれですか。
A 地球が、地軸を中心に自転しているから。
B 太陽が、太陽の軸を中心に自転しているから。
C 地軸が傾いているから。
D 地球が、太陽の周りを公転しているから。

昼間の時間に関する問2
下の図は、太陽光線が地球を照らしている様子を示しています。

これは、メルボルンで、昼間の時間が最も短い日の図であるとします。
図に、地軸、北半球、南半球、赤道を書き入れ、それぞれに名前をつけてください。

 

昼間の時間に関する問1
プロセス:科学的現象を記述し、説明し、予測すること。
知識・概念:地球と宇宙
状況・文脈:地球と環境
正答:A

         正答    誤答   無答
日本      56.5(%)   41.3    2.2     
ODBC平均   42.6(%)   53.5    3.9

昼間の時間に関する問2
プロセス:科学的現象を記述し、説明し、予測すること。
知識・概念:地球と宇宙
状況・文脈:地球と環境

昼間の時間に関する問2の採点基準
コード 回答
完全正答(2点)
21

 

部分正答(2点)
21
 
22
 
23
 
24
 
部分正答(1点)
11

 

誤答/無答(0点)
00
その他の答え
99
無答

         正答    誤答   無答
日本      56.5(%)   41.3    2.2     
ODBC平均   42.6(%)   53.5    3.9



   
  とりあえず、ここまで。