「ブッダのことば」スッタニパータ 中村元 訳(岩波文庫) 第4 八つの詩句の章 |
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16.サーリプッタ |
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958 |
修行者は世を厭(いと)うて、人のいない座所や樹下や墓地を愛し、山間の洞窟の中におり、 |
959 |
または種々の座所のうちにいるのであるが、そこにはどんなに恐ろしいことがあるのだろう。──修行者は音のしないところに坐臥(ざが)していても、それらを恐れて震えてはならないのだが。 |
963 |
師(ブッダ)は答えた、 |
964 |
しっかりと気をつけ分限を守る聡明な修行者は、五種の恐怖におじけてはならない。すなわち襲いかかる虻と蚊と爬虫類と四足獣と人間(盗賊など)に触れることである。 |
965 |
異った他の教えを奉ずる輩を恐れてはならない。──たといかれらが多くの恐ろしい危害を加えるのを見ても。──また善を追求して、他の諸々の危難にうち勝て。 |
966 |
病いにかかり、餓えに襲われても、また寒冷や酷暑をも耐え忍ぶべきである。かの<家なき人>は、たといそれらに襲われることがいろいろ多くても、勇気をたもって、堅固に努力をなすべきである。 |
967 |
盗みを行なってはならぬ。虚言を語ってはならぬ。弱いものでも強いものでも(あらゆる生きものに)慈しみを以て接せよ。心の乱れを感ずるときには、「悪魔の仲間」であると思って、これを除き去れ。 |
970 |
すなわち『わたしは何を食べようか』『わたしはどこで食べようか』『(昨夜は)わたしは眠りづらかった』『今夜はわたしはどこで寝ようか』──家を捨て道を学ぶ人は、これら(四つの)憂いに導く思慮を抑制せよ。 |
971 |
適当な時に食物と衣服とを得て、ここで(少量に)満足するために、(衣食の)量を知れ。かれは衣食に関して恣(ほしい)ままならず、慎しんで村を歩み、罵(ののし)られてもあらあらしいことばを発してはならない。 |
972 |
眼を下に向けて、うろつき廻ることなく、瞑想に専念して、大いにめざめておれ。心を平静にして、精神の安定をたもち、思いわずらいと欲のねがいと悔恨とを断ち切れ。 |
973 |
他人からことばで警告されたときには、心を落ちつけて感謝せよ。ともに修行する人々に対する荒んだ心を断て。善いことばを発せよ。その時にふさわしくないことばを発してはならない。人々をそしることを思ってはならぬ。 |
974 |
またさらに、世間には五つの塵垢(ちりあか)がある。よく気をつけて、それらを制するためにつとめよ。すなわち色かたちと音声と味と香りと触れられるものに対する貪欲を抑制せよ。 |
975 |
修行僧は、よく気をつけて、心もすっかり解脱して、これらのものに対する欲望を抑制せよ。かれは適当な時に理法を正しく考察し、心を統一して、暗黒を滅ぼせ。」 |