「ブッダのことば」スッタニパータ  (抄) 中村元 訳(岩波文庫)
第1 蛇の章

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  1.蛇  (抄)
1

蛇の毒が(身体のすみずみに)ひろがるのを薬で制するように、怒りが起こったのを制する修行者(比丘(びく))は、この世とかの世とをともに捨て去る。──蛇が脱皮して旧い皮を捨て去るようなものである。

2

池に生える蓮華(れんげ)を、水にもぐって折り取るように、すっかり愛欲を断ってしまった修行者は、この世とかの世とをともに捨て去る。 ──蛇が脱皮して旧い皮を捨て去るようなものである。

5

無花果(いちじく)の樹の林の中に花を探し求めて得られないように、諸々(もろもろ)の生存状態のうちに堅固なものを見いださない修行者は、この世とかの世とをともに捨て去る。──蛇が脱皮して旧い皮を捨て去るようなものである。

6

内に怒ることなく、世の栄枯盛衰を超越した修行者は、この世とかの世とをともに捨て去る。 ──蛇が脱皮して旧い皮を捨て去るようなものである。

9

走っても疾過ぎることなく、また遅れることもなく、「世間における一切のものは虚妄である」と知っている修行者は、この世とかの世とをともに捨て去る。──蛇が脱皮して旧い皮を捨て去るようなものである。

(貪り、愛欲、憎悪、迷妄、悪い習性、煩悩、妄執から離れること)

17

五つの蓋(おお)いを捨て、悩みなく、疑惑を越え、苦悩の矢を抜き去られた修行者は、この世とかの世とをともに捨て去る。──蛇が脱皮して旧い皮を捨て去るようなものである。

(五つの蓋(おお)い:貪欲・怒り・心の沈むこと・心のそわそわすること・疑い)