貞享3年冬、1686年、芭蕉43歳。

「雪まるげ」とは雪ダルマのこと。
雪の日、弟子の曾良(奥の細道で芭蕉に同行した)が遊びにきた。曾良は芭蕉の草庵の近くに住んでいて、芭蕉の食事の世話などをしていた。(芭蕉は自分ではほとんど炊事とかはしていなかったようだ。)
今日は雪がふったので、風流好きの芭蕉はうれしくてならない。曾良は氷を割ってお茶を入れる準備をしているようだ。曾良は無口な性で、お金のやり取りはないが、無償で芭蕉の世話をする。
芭蕉は、曾良のために俳諧の手ほどきをする以外は、してやれることがない。
「曾良、キミは湯を沸かしてお茶をいれておくれ。私はよいものを作ってみせてあげよう。雪ダルマだよ。」
こんな感じで、師匠と弟子の関係の日々が過ぎていったのかもしれない。見栄も外見もない、裸の師弟関係。でも芭蕉はそれを、しっかり俳文にして残している。さすが、芭蕉先生はただものではない。


雪丸げ(「きみ火をたけ」の詞書)

 曾良何某(なにがし)は、此のあたりちかく、かりに居をしめて、朝な夕なにとひつとはる。我くひ物いとなむ時は、柴折くぶるたすけとなり、ちゃを煮る夜は、きたりて氷をたたく。性陰閑(いんかん)をこのむ人にて、交金(まじはりこがね)をたつ。あるよ、雪をとはれて、

 きみ火をたけよき物見せむ雪まるげ
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