貞享4年秋、1687年、芭蕉44歳。

 「野ざらし紀行絵巻」の巻末の文「 あとがき」。
 「野ざらし紀行」は必ずしも「 紀行」のかたちにはなっていない。ただ、風景の中での「一念一動」(そのつど心を動かした感動)をしるしたのみ。他人に見せるべきものではない、としている。
 芭蕉は、旅に出ることで自分の句が何であるのかをしろうとした。風流の誠を追い求める生き方が、旅寝の中で見えてきたということか。いや、あなたも旅寝のひとつでもして、自分の句が何であるのか考えてみたら、ということか。
 「他見可恥(はずべき)もの」と謙譲しながら、野ざらしの旅枕を重ねるなかで得た句境に少なからず自負をいだいていたはず。

「野ざらし紀行絵巻」跋

此一巻は必ず記行の式にもあらず、ただ山橋野店の風景、一念一動をしるすのみ。爰(ここ)に中川氏濁子(じょくし)、丹青をして其形容を補しむ。他見可恥(はずべき)もの也。
           芭蕉散翁書
 たびねして我句をしれや秋の風

 

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