貞享2年12月末、1685年、芭蕉42歳、深川芭蕉庵。

乞うて食べ、もらって食べ、それでもどうやら飢え死にもせず、今年もくれてしまった。

どうやら自分も人並みの幸せ者の数に入ることになるのだろう。老いたしまった今年も暮れようとしている。

江戸時代、人生50年、40歳は初老ということだろう。それにしても「こふてくらひ、 もろうてくらひ」とは何と云う言い草。「 乞食の翁」と自嘲し、居直っている。だが、それは風狂の道に生きようとする芭蕉の矜持だろうか。

「めでたき人の」の詞書

こふてくらひ、 もろうてくらひ、やおらかつえもしなず、としのくれければ、

 めでたき人のかずにも入ん老の暮  ばせを
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