元禄元年10月、1688年、芭蕉45歳、笠作りに興ずる。
芭蕉の笠作りは、旅にくれた西行や蘇東坡や杜甫の先人に繋がる方法である。スキーヤーやサーファーが板の手入れをしたり、バイク乗りがバイクの手入れをしたりするように、芭蕉の旅の必須アイテムであったらしい笠を自分で作っている。その姿は楽しそうだ。宮城野の露や呉天の雪を想い、急にあられや時雨がきても、この笠さえあれば大丈夫。旅をすることと生きることを同じことに見ようとする芭蕉には、笠作りは生きることそのものになる。
笠の裏に書き付けた。
「よにふるも更に宗祇のやどり哉」
風雅の伝統につながり、人生は旅であるという想いが表現される。 風狂の精神。