天和2年冬、1682年、芭蕉39歳。

坡翁=蘇東坡は雲の浮かぶ広い空を笠にたとえた。老杜=杜甫は呉天の雪を笠として戴いたのだろうか。芭蕉庵でのわび住まいのつれづれ、しぶ笠を張りながら、旅に生きた西行法師の笠を思う。
この世に生きながらえるのも、宗祇の詠んだ時雨の宿りのようなものだなあ。
元句は宗祇の「世にふるもさらに時雨の宿りかな」。
元禄元年の「笠はり 2」の俳文につづく。

「笠はり 1」(「 世にふるも」句文)

坡翁(はおう)雲天の笠を傾け、老杜(ろうと)は呉天の雪を戴く。
草庵のつれづれ、手づから雨のしぶ笠をはりて、西行法師の侘笠(わびがさ)にならふ。

 世にふるも更に宗祇(そうぎ)のやどり哉 江散人芭蕉

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