2.学習習慣・学習意欲に関すること
(1)健康と生活習慣
学習効果を上げるためには、身体的健康の維持・増進を図ることが大事である。そのしつけでは、次の点に注意する。
・規律正しい生活をする。
・適度に運動する。
・栄養を十分にとる。
・睡眠を十分にとる。
夜ふかし、朝寝坊で、朝食もとらないで登校するようでは、学習の能率は上がらない。このことはだれでも知っているが、家庭によっては実行が難しい。家庭との連携による学習環境の整備が必要である。
学習を遂行するにあたって、生徒の健康状態を十分に考える。身体が弱い、歯が痛い、胃腸の調子が悪い、疲れているなどのときには、学習に集中できない。身体だけでなく心やメンタルな分野でのケアも大切である。
(2)「自発性、自主性」を伸ばす。
学習は子どもが自分から進んで、自分の力で進めていくとき、その効果が上がるが、このような自発的、自主的な学習は意識的に努力しないと身につかない。そのためには、日常生活の場で、何事にも元気よく、前向きに取り組む姿勢が大切。積極的に取組み、身の回りのことも自分でできるようにすること。「自ら学ぶ」という積極的な態度をみにつけるようにする。
「自発性、自主性」は、「動機づけ」に依存する部分が大きい。
(3)「自己効力感」「成功感」を味わわせる。
子どもの能力に合った学習をさせれぱ、子ども自身「よくできた」という成功感、満足感をもつことができ、「自分もやればできる」といった自信(有能感・効力感)もつき、次にもやってみようという意欲も出てくる。難しい課題にチャレンジしてそれをやり遂げた時の自己効力感は、さらに大きな効果をもつ。
日々の努力の積み重ねで必ず達成できるという「前向きな姿勢」。自分も他人も受け入れることができる「自己肯定感」。努力を積み重ねれば「達成できる」「成功する」という体験を大切にする。自分の能力というより、努力の積み重ねで成功したという達成感がよい。
(4)「集中力・注意力」を伸ばす。
家庭で予習、復習をするときにも、学校で授業を受けるときにも注意を集中することが大事。「落ちついて、集中して勉強する」ことは、学習の基本的な姿勢である。これは子供により、性格的なものの影響が大きい。反省が多いことだが、落ち着きのない子供は学習も難しい。だが、子どもは年齢とともに変わって変わっていく。
(5)意図的な「努力」をうながす。
本人が「努力して注意を集中」することも必要である。教育では、子どもがいやだと思うことでも学習させなければならないこともある。したがって、困難なことでも、興味のないことでも、本人が努力して注意を集中するよう指導することも必要である。やり遂げようとする意志の強さも大切。
(6)「根気強さ」を養う。
自分のやり始めたことは最後までやりぬく。難しいことでも、ねばり強く努力するといった根気強さは、学習にとって基本的な条件である。だが人は、目的がないと根気強く努力することはできない。学習の目的を子供たちが納得して目指そうとする意志を持つことが前提のなるだろう。
自分の欲求やわがままを押え、最後までやりぬく力は「自己統制力」である。自己統制力を養うためには、明確な目的とともに、規律正しい生活をすることが大事である。起床、登校、食事、入浴、就寝、など予定どおりにきちんとさせる。
(7)「社会性」を養う。
学校の学習は、学級という集団の中で行われる。社会性のある子どもは、集団生活にうまく適応し、学習もうまくいく。一人でやる学習より、助け合い、教え合いながらの学習は効果が大きいといわれている。
社会性の発達していない子どもは、不適応をおこし、学習の能率も上がらない。社会性を育てるためには、相手の立場を考えるようにして、わがままを押え、また集団の規則を尊重し、順守するように指導する。
コミュニケーション力ともいわれるが、自分の立場や利益だけでなく、相手や他の人の立場や利害や感情に気を配れるようになることがコミュニケーションの前提である。同じ人間・人格として、相手に対して敬意の意識を持つこと。
(8)性格的なもの
学習の基本的なしつけでは、性格的なものにも関係してくる。頭はよくても、意志が弱かったり、消極的であったり、のんきすぎたり、注意が散漫であったりすると、なかなかよい成績はとれない。根気のない子ども、気が小さくて緊張しやすい子ども、不安の強すぎる子ども、競争心が強すぎてあせる子ども、社会性がなくて人見知りする子どもなども、学習の能率が上がらない。他の人との良好な人間関係を築けることが必要なのだが。
(9)学習への「動機付け」
現在の学習は、将来の自分のためという自覚。
現在の学習は、将来の自己実現・自由な選択のための前提になるという自覚。
自分の人生における幸せと、自由で民主的な社会の構成員になるために、学習するという気概。
当然、資本主義社会であるから、お金を儲けたい、よい自動車に乗りたい、父母や家族に良い暮らしをさせてあげたい、社会的な名声や地位を得たい等の人間的な欲求も一概に否定されるべきものではない。むしろ、現実的な欲求のほうが、学習の動機付けとして強いことのほうが多い。個人の自由な欲求は、他人の自由を尊重し承認する限り、自由である。
欲求や希望の中には次のようなものもある。それでよいのだと思う。
医者になって苦しんでいる人を助けたい、福祉に厚い社会にしたい、家業を継ぎたい、高度医療を安く提供したい、世界の貧困者を助けたい、環境にやさしいエネルギーを考えたい、人々の暮らしや産業の役立つ発明をしたい、ノーベル賞をとりたい、おいしい米や野菜をつくりたい、夢のある建物を造りたい。
人は、遠い将来の動機より、目先の利益を選ぶことも多い。子供たちにとってはなおさらである。1週間に1冊本を読んだら、宿題をきちんとやったら、1時間勉強をしたら、褒美をあげるといった、眼前ニンジン型の学習動議づけも、効果はある。
(10)内発・外発の「学習意欲」
学習することの目的や動機があれば、学習意欲も湧いてくる。
<内発的なもの>
充実志向 学習自体が楽しい。知的好奇心・探究心。
訓練志向 思考力・判断力などを鍛えるため。
実用志向 仕事や生活に生かすため。
<外発的なもの>
関係志向 他人につられて。
自尊志向 プライドや競争心から。あの人には負けたくない。
賞賛志向 よい成績をとって褒められたい。報償を得たい。
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