6.発達の段階に応じた体系的なキャリア教育
「多くの人は、人生の中で職業人として長い時間を過ごすこととなる。このため、職業や働くことについてどのような考えを持つのかや、どのような職業に就き、どのような職業生活を送るのかは、人がいかに生きるか、どのような人生を送るかということと深くかかわっている。 しかし、働くことや職業に対する理解の不足や安易な考え方等、若者の勤労観・職業観等の価値観が、自ら十分に形成されていないことが指摘されている。人生の中で「働くこと」にどれだけの重要性や意味を持たせるのかは、最終的に自分で決めることである。その決定の際に中心となる勤労観・職業観も、様々な学習や体験を通じて自らが考えていく中で形成・確立される。
また、子ども・若者の働くことに対する関心・意欲・態度、目的意識、責任感、意志等の未熟さや学習意欲の低下が指摘されるなど、現在行っている学習と将来の仕事とが結びつけて考えられない者が多い。このため、子どもや若者にとって、自分の「将来の姿」を思い描き、それに近付こうとする意欲を持つことや、学習が将来役立つことを発見し自覚することなどが重要であり、これらは学習意欲の向上にもつながっていく。 このようなことを踏まえ、後期中等教育修了までに、(中略)生涯にわたる多様なキャリア形成に共通した能力や態度を身に付けさせることと併せて、これらの育成を通じて価値観、とりわけ勤労観・職業観を自ら形成・確立できる子ども・若者の育成を、キャリア教育の視点から見た場合の目標とすることが必要である。(第2章1)」
「基礎的・汎用的能力」を構成する4つの能力
○ 基礎的・汎用的能力の具体的内容については、「仕事に就くこと」に焦点を当て、実際の行動として表れるという観点から、
「人間関係形成・社会形成能力」 人間関係能力
【人間関係形成能力】【自己実現・人間関係尊重能力】
「自己理解・自己管理能力」 意思決定能力
【課題決定・自己実現能力】【意思決定能力】
【生き方選択能力】
「課題対応能力」 情報探索・活用能力
【啓発的経験への取り組み能力】【キャリア情報活用能力】
【学業と職業とを関連づける能力】【キャリアの社会的機能理解能力】
「キャリアプランニング能力」 キャリア設計
【仕事における役割認識能力】【生活上の役割把握能力】
【キャリア設計の必要性及び過程理解能力】
の4つの能力に整理した。
○ これらの能力は、包括的な能力概念であり、必要な要素をできる限り分かりやすく提示するという観点でまとめたものである。この4つの能力は、それぞれが独立したものではなく、相互に関連・依存した関係にある。このため、特に順序があるものではなく、また、これらの能力をすべての者が同じ程度あるいは均一に身に付けることを求めるものではない。(第1章3B)
その上で、それぞれの能力の具体的な内容を次のように整理している。
.ア 人間関係形成・社会形成能力
「人間関係形成・社会形成能力」は、多様な他者の考えや立場を理解し、相手の意見を聴いて自分の考えを正確に伝えることができるとともに、自分の置かれている状況を受け止め、役割を果たしつつ他者と協力・協働して社会に参画し、今後の社会を積極的に形成することができる力である。
この能力は、社会とのかかわりの中で生活し仕事をしていく上で、基礎となる能力である。特に、価値の多様化が進む現代社会においては、性別、年齢、個性、価値観等の多様な人材が活躍しており、様々な他者を認めつつ協働していく力が必要である。また、変化の激しい今日においては、既存の社会に参画し、適応しつつ、必要であれば自ら新たな社会を創造・構築していくことが必要である。さらに、人や社会とのかかわりは、自分に必要な知識や技能、能力、態度を気付かせてくれるものでもあり、自らを育成する上でも影響を与えるものである。具体的な要素としては、例えば、他者の個性を理解する力、他者に働きかける力、コミュニケーション・スキル、チームワーク、リーダーシップ等が挙げられる。
.イ 自己理解・自己管理能力
「自己理解・自己管理能力」は、自分が「できること」「意義を感じること」「したいこと」について、社会との相互関係を保ちつつ、今後の自分自身の可能性を含めた肯定的な理解に基づき主体的に行動すると同時に、自らの思考や感情を律し、かつ、今後の成長のために進んで学ぼうとする力である。
この能力は、子どもや若者の自信や自己肯定観の低さが指摘される中、「やればできる」と考えて行動できる力である。また、変化の激しい社会にあって多様な他者との協力や協働が求められている中では、自らの思考や感情を律する力や自らを研さんする力がますます重要である。これらは、キャリア形成や人間関係形成における基盤となるものであり、とりわけ自己理解能力は、生涯にわたり多様なキャリアを形成する過程で常に深めていく必要がある。具体的な要素としては、
例えば、自己の役割の理解、前向きに考える力、自己の動機付け、忍耐力、ストレスマネジメント、主体的行動等が挙げられる。
.ウ 課題対応能力
「課題対応能力」は、仕事をする上での様々な課題を発見・分析し、適切な計画を立ててその課題を処理し、解決することができる力である。
この能力は、自らが行うべきことに意欲的に取り組む上で必要なものである。また、知識基盤社会の到来やグローバル化等を踏まえ、従来の考え方や方法にとらわれずに物事を前に進めていくために必要な力である。さらに、社会の情報化に伴い、情報及び情報手段を主体的に選択し活用する力を身に付けることも重要である。具体的な要素としては、情報の理解・選択・処理等、本質の理解、原因の追究、課題発見、計画立案、実行力、評価・改善等が挙げられる。
.エ キャリアプランニング能力
「キャリアプランニング能力」は、「働くこと」の意義を理解し、自らが果たすべき様々な立場や役割との関連を踏まえて「働くこと」を位置付け、多様な生き方に関する様々な情報を適切に取捨選択・活用しながら、自ら主体的に判断してキャリアを形成していく力である。
この能力は、社会人・職業人として生活していくために生涯にわたって必要となる能力である。具体的な要素としては、例えば、学ぶこと・働くことの意義や役割の理解、多様性の理解、将来設計、選択、行動と改善等が挙げられる。(第1章3B)
「基礎的・汎用的能力」は「4領域8能力」を全て包含するものである。
その上で、
a)「社会人基礎力」等において重視されていながら、「4領域8能力」においては必ずしも前面には取り上げられてこなかった「忍耐力」「ストレスマネジメント」などの「自己管理能力」の側面を加え、
b)「仕事をする上での様々な課題を発見・分析し、適切な計画を立ててその課題を処理し、解決することができる力」、すなわち「課題対応能力」に関する要素を強化したものと言えよう。
「基礎的・汎用的能力」 (三浦のまとめ)
領域
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領域説明
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能力説明
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人間関係能力
(・社会形成能力) |
◎自己と他者の両方の存在に関心をもち,様々な人々との関係を築きながら,自己を生かしていくための諸能力
○他者の個性を尊重し,自己の個性を発揮しながら,様々な々とコミュニケーションを図り,協力・共同してものごとに取り組む。 |
【自己実現・人間関係尊重能力】
○自己理解を進め,他者との関連で成立する自分の行動を,キャリアとの関連で理解する能力であり,その過程で他者を尊敬する心を養う能力
自他の理解能力
自己理解を深め,他者の多様な個性を理解し,互いに認め合うことを大切にして行動していく能力 |
【人間関係形成能力】
○他者から受ける自己への様々な影響を理解し,人間関係を形成しながら自己の成長を遂げていく能力
コミュニケーション能力
多様な集団・組織の中で,コミュニケーションや豊かな人間関係を築きながら,自己の成長を果たしていく能力 |
キャリア情報探索・活用能力
(自己理解・自己管理能力) |
◎キャリアに関係する幅広い情報源を知り,様々な情報を活用して自分の仕事・社会との関係づけを通し,自己と社会への理解を深めるための諸能力
○学ぶこと・働くことの意義や役割及びその多様性を理解し,幅広く情報を活用して,自己の進路や生き方の選択に生かす。 |
情報収集・探索能力
進路や職業等に関する様々な情報を収集・探索するとともに,必要な情報を選択・活用し,自己の進路や生き方を考えていく能力
【啓発的経験への取り組み能力】
○実際の体験を通して現実のキャリアの世界を見つめる能力であり,それに取り組む能力
【キャリア情報活用能力】
○キャリアに関する情報を知り,発達段階に応じた活用を行い,自分の仕事と社会とを関連づけながら自己と社会への理解を深める能力 |
職業理解能力
様々な体験等を通して,学校で学ぶことと社会・職業生活との関連や,今しなければならないことなどを理解していく能力
【学業と職業とを関連づける能力】
○学校で学ぶことと社会生活や職業生活との関連,機能を知り,学校教育を理解する能力
【キャリアの社会的機能理解能力】
○キャリアに関する情報を社会における必要性や機能面で理解し,設計につなげる能力 |
意思決定能力
(課題対応能力) |
◎進路選択で遭遇する様々な葛藤に直面し,複数の選択肢を考え,選択時に納得できる最善の決定をし,その結果に対処できる諸能力
○自らの意志と責任でよりよい選択・決定を行うとともに,その過程での課題や葛藤に積極的取り組み克服する。 |
選択能力
様々な選択肢について比較検討したり,葛藤を克服したりして,主体的に判断し,自らにふさわしい選択・決定を行っていく能力
【意思決定能力】
○意思決定にともなう責任を受け入れ,決定へのプロセスを理解する能力。様々な葛藤場面の複数の選択肢から,選択時に最善の決定をおこなう能力
【生き方選択能力】
○憧れから現実へ進行するなかで,自己の生き方にそった職業やその他の諸活動を選択していく能力 |
【課題決定・自己実現能力】
○自己理解を深め,自己実現を推し進める過程で直面する課題を設定し,それに真摯に取り組み解決しようとする能力
課題解決能力
意思決定に伴う責任を受け入れ,選択結果に適応するとともに,希望する進路の実現に向け,自ら課題を設定してその解決に取り組む能力 |
キャリア設計能力 |
◎キャリア設計の必要性に気づき,それを実際の選択行動において実現するための諸能力
○夢や希望を持って将来の生き方や生活を考え,社会の現実を踏まえながら,前向きに自己の将来を設計する。 |
役割把握・認識能力
生活・仕事上の多様な役割や意義及びその関連等を理解し,自己の果たすべき役割等についての認識を深めていく能力
【生活上の役割把握能力】
○キャリア設計は毎日の生活の延長上にづき,そありそこでの役割を把握し,その関連を示す能力
【仕事における役割認識能力】
○仕事には様々な役割があり,それぞれがどのように関連し,変化しているかを認識する能力 |
【キャリア設計の必要性及び過程理解能力】
○計画的に人生を歩み,夢をかなえていくためのキャリア設計の必要性を,実際の選択行動の中で認識していく能力
計画実行能力
目標とすべき将来の生き方や進路を考え,それを実現するための進路計画を立て,実際の選択行動等で実行していく能力 |
実施企業の多くは教育支援活動を行うことにより、参加者に好ましい効果があると考えているが、中でも、
「望ましい勤労観、職業観の育成」(85.6%)、
「基本的な社会常識・規範やマナーの習得」(81.2%)、
「コミュニケーション能力の向上、協調性の習得」(69.8%)
に効果があると考える企業が多いことが示された。
2010年3月卒業者の採用選考にあたって特に重視した点
(日本経済団体連合会調査)
コミュニケーション能力
主体性
協調性
チャレンジ精神
誠実性
責任感
潜在的可能性
論理性
専門性
職業観・就労意識
リーダーシップ
柔軟性
創造性
信頼性
一般常識
学業成績
倫理観
出身校
語学力
感受性
クラブ活動/ボランティア活動歴
所属ゼミ/研究室
保有資格
インターンシップ受講歴
その他 |
81.6(%)
60.6
50.3
48.4
50.3
32.9
25.6
21.2
19.2
16.6
16.3
15.8
14.5
13.7
13.5
5.4
4.1
3.9
2.6
1.0
0.8
0.8
0.5
0
4.1
|
7.各学校におけるキャリア教育の目標
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学校におけるキャリア教育の目標例
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4つの能力領域を発達させる進路指導活動モデル 「進路指導活動モデル」
(Excel)
●自己及び他者への積極的関心の形成・発展
自分及び他者の大切さに気付き、家族や友達・周囲の人々にかかわりながら積極的に働きかけようとする能動的な子ども。
「自己及び他者への積極的関心の形成・発展」については、他者とコミュニケーションをとる能力・態度を中心に、挨拶や返事、応答の仕方などの基本的な生活習慣の確立や、遊びや集団活動を通しての人間関係形成能力の育成など、具体的な目標を設定することが望まれる。小学校段階でこの能力を育成することは、中学校や高等学校段階における人格の形成に大きな影響がある。
【発達課題を踏まえたねらいの例】
○返事やあいさつをする。
○決められた時間や約束を守る。
○してよいことと悪いことがあることが分かる。
○ありがとうやごめんなさいが言える。
○自分の気持ちや意見を伝える。
○係や当番の仕事に取り組み、その大切さが分かる。
○作業の準備や片づけをする。
○自分のよいところを見付ける。
○友だちのよいところを認め励まし合う
○自分の意見や気持ちを分かりやすく表現する。
○いろいろな職業や生き方があることが分かる。
○係や当番活動に積極的にかかわる。
○互いの役割や役割分担の必要性が分かる。
○将来の夢や希望をもつ。
○計画づくりの必要性に気付き、作業の手順が分かる。
○自分の仕事に対して責任を感じ、最後までやり通そうとする。
●身のまわりの仕事や環境への関心・意欲の向上
身のまわりには様々な仕事がたくさんあることに気付き、そこで働いている人の思いや願いを探ろうとする子ども。
「身のまわりの仕事や環境への関心・意欲の向上」については、発達段階と行動範囲に応じて、かかわり合う人への関心や働いていることの理解、感謝する気持ちの高揚など、仕事に関する知識を広げるだけではなく、意識面での成長を促す必要がある。また、仕事の大切さについて理解を深めることは将来設計能力の促進にもつながり、将来の仕事に対する関心・意欲を高めることができる。
○友達の気持ちを考える。
○身近な人々の生活に関心をもち、積極的にかかわる。
○身近で働く人の様子が分かり、仕事の内容ややり方に興味・関心をもつ。
○係活動や家での仕事などを通して、自分の役割の大切さが分かる。
○自分の生活を支えている身の回りの人に感謝する。
○お世話になった人々に感謝する。
●夢や希望、憧れる自己イメージの獲得
得意なことや好きなことを生かして将来なりたい自分の姿を描いたり、目標をもったりすることを通して、できることをやり尽くそうと努力する子ども。
「夢や希望、憧れる自己のイメージの獲得」については、働くことの価値を形成し、社会の分業についての理解を深めることや、自分の仕事を自分で意思決定する能力を高めることを目標としたい。集団において役割を果たすことの有用感やだれかの世話になっていることへの感謝の気持ちを基盤に、仕事をすることのすばらしさを感じ取らせたい。また、自分のやりたいことや将来の希望など、自己実現に向けて努力する意欲をもたせることも大切である。
○自分の好きなことが言える。
○自分の好きなもの、大切なものをもつ。
○自分のよいところを見付け、自信をもつ。
○みんな仲良く学習したり遊んだりする。
●勤労を重んじ目標に向かって努力する態度の育成
係活動やお手伝いなど、その場で自分にできることを見つけて進んで実践しようとしたり、目標をもって努力しようとしたりする意欲をもった子ども。
「勤労を重んじ目標に向かって努力する態度の育成」については、集団や社会のために働いている人の存在を理解し、感謝の気持ちを高めるとともに、自分の役割について考え、自分の能力を生かして積極的に仕事をする意識や態度を育てることを目標としたい。学年が進むにつれて視野が広がり、行動範囲も広くなることから、接する人も増えることが予想される。情報量も増加し、それらを整理・活用する情報活用能力や、正しく判断する能力や意思決定能力も求められる。
○自分の生活を支えている人に感謝する。
○友達の気持ちや考えを理解しようとする。
○友達と協力して学習や活動に取り組む。
○働くことの楽しさが分かる。
○してはいけないことが分かり自制する。
○自分が挑戦したい役割を選択する。
○自分の役割の必要性を理解し、責任をもって役割を果たそうとする。
○活動において課題や困難が生じた場面において、解決方法を工夫して解決しようとする。
○思いやりの気持ちをもち、相手の立場に立って考え行動しようとする。
○自分の思いや考えを、場に応じた態度で適切に伝えることができる。
○ 規範意識をもち、社会におけるルールや相手との約束を守るなど信頼される行動をとろうとする。
○社会生活にはいろいろな役割があることやその大切さが分かる。
○将来のことを考える大切さが分かる。
○社会と自己のかかわりから自分の特徴に気付き、自分らしい生き方や憧れる生き方につ いて考える。
○夢や目標に向かってあきらめずに努力することの大切さが分かる。
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中学校におけるキャリア教育
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小学校においてキャリア教育を理解し、進めていくためには、中学校におけるキャリア教育の実践を視野におさめ、児童生徒の長期的なキャリア発達を支援する観点に立って、計画的・組織的に実施することができるよう、各学校が連携を図りつつ、教育課程の編成の在り方を見直していく必要がある。
「進路の探索・選択にかかる基盤形成の時期」の小学生をより深く理解し、小学生にとって望ましいキャリア教育を実践していくためには、「現実的探索と暫定的選択の時期」としての中学校段階での実践の方向性を把握しておくことが望ましい。
▼小学校・中学校・高等学校におけるキャリア発達
小学校
進路の探索・選択にかかる基盤形成
・自己及び他者への積極的関心の形成・発展
・身のまわりの仕事や環境への関心・意欲の向上
・夢や希望、憧れる自己イメージの獲得
・勤労を重んじ目標に向かって努力する態度の形成
中学校
現実的探索と暫定的選択の時期
・肯定的自己理解と自己有用感の獲得
・興味・関心等に基づく勤労観、職業観の形成
・進路計画の立案と暫定的選択
・生き方や進路に関する現実的探索
高等学校
現実的探索・試行と社会的移行準備の時期
・自己理解の深化と自己受容
・選択基準としての勤労観、職業観の確立
・将来設計の立案と社会的移行の準備
・進路の現実吟味と試行的参加
.▼児童の学習状況の評価
キャリア教育の視点から評価の視点や配慮事項を設定し、評価していくことにより、各教科等の本来の目標をよりよく豊かに達成していくことが重要になる。
・キャリア教育の目指す目標が、具体的で明確であること
・目標が各学校や児童の実態に応じて、実行可能な内容であること
・教員がキャリア教育の意義と実践への計画、方法等を十分理解できていること
・教育活動の実行に際し、児童にどのような変化や効果が期待されるか等が、具体的に示されていること
・評価方法等が適切に示されていること
・教員が、評価の目的、方法等について理解し、適切に評価できる能力を有すること
・キャリア教育の推進体制が確立されていることなど
▼評価の方法
信頼される評価の方法であること、また、多様な評価の方法を適切に組み合わせたものであること、そして、学習の過程を評価する方法であることが重要である。
評価の方法としては、児童の学習状況を評価する教師の適切な判断に基づいた評価として実施することが必要であり、偏った判断ではなく、おおよそどの教師も同じように判断できる評価方法や評価基準等が求められる。例えば、あらかじめ指導する教師間において授業の目標に従った評価の視点を確認しておき、これに基づいて児童の学習状況を評価することなどが考えられる。
多様な評価の方法としては、児童の発表や話合いの様子、学習や活動の状況などの観察による評価、児童のレポート、ワークシート、ノート、作文、絵などの制作物による評価、児童の学習活動の過程や成果などの記録や作品を計画的に集積したポートフォリオ、評価カードなどによる児童の自己評価や相互評価、教師や地域の人々等の記録による他者評価がある。また、複数の授業評価項目を設定し評価する評価尺度法、教師と児童の発言内容を記述する文章記述法、録音や映像による記録法などの評価の方法もある。なお、これらの多様な評価は、適切に組み合わせて評価することが考えられる。また、この際、教師間や教師と児童の間で評価に関する視点を共有していくことも考えられる。
そして、学習の過程を評価する方法としては、上記の多様な評価方法が、学習活動の事前での児童の準備状態の把握と改善、学習活動の過程での児童の状態の把握と改善、学習活動の終末での児童の状態の把握と改善という、キャリア教育の各過程に計画的に位置付けられる中で、このそれぞれの過程を通して児童の学習状況の把握を生かした適切な指導に十分役立てられるように評価することが肝要である。
また、キャリア教育では、その児童の内に個人としてはぐくまれているよい点や進歩の状況などを積極的に評価する個人内評価や、それを通して児童自身も自分のよい点や進歩の状況などに気付くようにすることも大切である。
このようなキャリア教育における児童の学習状況の評価の方法は、児童の内ある資質や能力を的確に捉え、見定め、かつ、それをよりよくはぐくむ教師の学習指導に直接的に役立つ評価の方法として常に意識することも重要である。
▼授業改善等を行う契機となるべきもの
キャリア教育における教育活動の改善を行うに当たっては、先に述べたように、よりよく児童をはぐくもうとするあたたかい児童理解と、それを基にした児童の学習活動を意味付ける深く丁寧な見取りを常に心掛けることは重要である。また、このあたたかい児童理解と丁寧な見取りについては、キャリア教育で学習指導をした教師相互に、あるいは学習指導に協力してくれた地域の人々などとともに語り合うことも、教育活動の改善には極めて重要である。
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