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アイガー・ユングフラウ
マッターホルン
モンブラン
ルシェルン・ベルン・レマン湖

アイガーとユングフラウ     [地図]


インターラークよりユングフラウ
インターラーケンからみたユングフラウ。緑の山間にみえる白いユングフラウが美しい。

インターラーケンから

 2009年8月、スイス航空にてチューリッヒ着。ルシェルンに1泊し、ベルンを経由してインターラーケンへ。ここでは休憩しただけだが、手前の針葉樹の緑の山の間から見える白いアルプスが印象的だった。
 見えるのはユングフラウ。いよいよヨーロッパ・アルプスに入る、そんな期待で心が震える。単なる観光客でしかないのだが、明日、あの4258mの山のすぐ横の3454mのユングフラウヨッホに昇るのだと思うと、 ほとんどユングフラウにアタックするような興奮を覚える。 ベンチに座り、アイスクリームをなめながら、ただ呆けたように風景の中にたたずんでいるしかなかった。

 ひょんなことから、スイス・アルプスに来ることになったが、とても満足、後悔なし。ほとんど冥土で冥土話し。

アイガー北壁
宿のバルコニーから見たアイガー北壁。

アイガー北壁

 インターラーケンからバスでグリンデルワルトの宿に入る。
 宿は地下2階があてがわれてがっかりしたが、左の写真は部屋のバルコニーから撮影したもの。いちおう納得。
 かのアイガー北壁がやや斜めではあるが眼前にそびえ立っていて感激もの。写真はアイガーの頂上に朝日があたった時のもの。
 明日は、アイガーを見ながらのハイキング。スイスに来た実感にこころが震える。


ロープウェイに乗りアイガーハイキングへ。

 グリンデルワルトから1駅下ったところ(953m)から、ロープウェイに乗りハイキングの出発点となる終点まで(2230m)。所要時間25分。
 写真は、 ロープウェイから撮ったもの。森林と牧草地に点在する家々の風景が美しい。
冬は当然、スキー客でにぎあうことになるのだろう。

 山間の森林と牧草の風景は美しいが、野菜などの畑がほとんどみられない。スイスでは野菜があまり採れないため、貴重なのだそうだ。そのためか、ホテルでの食事も野菜がほとんど出なかった。

 牧草地は針葉樹以外のほとんどの場所をおおっていて、牧畜に必要な草を確保しているようだ。牧草地の緑は灰色の岩山と対比して美しいが、生活のための必死の措置であることがわかる。


赤○に自転車の標識は自転車専用、ではなく自転車禁止。

ハイキングに出発

 ロープウェイの終点(2230m)、ハイキングの出発点で、ガイドさんの説明を聞く。あたりの風景があまりにもすばらしく、どんな説明だったか覚えていない。
 交通標識が立っている。赤い太い丸枠の中に自転車が描いてある。自転車専用道路かと思いきや、「自転車禁止」の看板だということ。日本なら赤い斜線がついているが、スイスでは禁止するものの絵が描かれている。タバコの絵は当然(?)禁煙ということ。
 スイスでも自転車が盛んで、山岳の峠道や登山道でも平気で自転車が走っている。ケーブルカーやロープウェイの中でも平気で自転車を持ち込んでくる。許されているようだ。

 さあ、踊る心を抑えてハイキングに出発。
 すぐ左手の山はアスガー。残念ながら逆光。

ユングフラウを前にハイキング
アルプスはノーテンキハイク。

 快晴のもと、ガイドさんの説明を聞きながら、高山植物も咲きそって、まことにノーテンキな散歩。こんな贅沢な散歩、いやハイキングで、ほとんどこの世のものとも思われず、夢見心地。
 日本では、大雪山で8人もの凍死者を出した痛ましいニュースがあったばかりなのに、スイスでは絶景の中でこんなにも安全に楽しくハイキングを楽しむことができる。これは何なのか。
 スイスでは、2000mでも3000mの山でも登山道はよく整備され登山者やマウンテンバイカーは安心して山を楽しむことができる。見晴らしのいい場所にはレストランが整備され、テラスでビールを飲みながら昼食を楽しむことができる。自然を愛で、自然に親しみ、自然を征服した人間の能力に満足しながら、おいしくビールをのむことができる。すばらしい。
 山道を若いらしい夫婦が乳母車を元気よく押していた。

牛たちとカウベル
ハイキングコースには、放牧されている牛がカウベルを鳴らして草を食んでいる。

 この山の頂上の平らなところでは、牛たちがカウベルを鳴らしながらせわしなく草を食べていた。
 下の村の人々からこの夏の季節だけ牛を預かって放牧しているのだという。カウベルは迷子の牛を探しやすくするためのようだが、多分に観光用と思われる。
 下の青い植物はトリカブト。

ハイキング道の正面にユングフラウが
ハイキング道の正面にユングフラウが

 やがて、ハイキング道の正面にユングフラウが見えてくる。ユングフラウは雄々しい4158mの高山。
 こんな風景の中のハイキングは、ほとんど天国への入り口のよう。もう少し若く、余裕があったなら、夏の間1か月くらいスイスに住み込んで、あっちの山こっちの山々を歩いてみたいものだ。なにも頂上に上り詰めることだけが登山ではない。こんな天国への階段のような山歩きも悪くない。
 スイスの人は、ただ自然を自然のまま残しているのではない。自然を大切にしながら、観光資源としても、人間の欲求との共生を図っているのがよくわかる。2000〜3000mの山では森林や林の植生も限界のようだ。草花しか生えていない。これなら観光開発と自然との共存も容易だろう。

クライネ・シャイデック2061m
アイガー北壁がすぐ目の前、クライネ・シャイデック。クリックで拡大する。

 1時間30分ほどののんびりしたハイキングの目的地、クライネ・シャイデック2061m。
右下の建物は、登山電車の駅。標高が書いてある。

 眼前の山はアイガー3970m、右の山はメンヒ4107m。
 アイガー北壁は内側に窪んでいて、圧巻。この壁を登ろうという情熱は何なのだろう。

 駅の裏の丘の上からの眺めが最高。この場所のどこかにアルプスを愛した新田次郎の記念碑があるということで探してみたが残念ながら不明。わかっている人の案内がないと無理。「アイガー北壁」を読まなくては。
 それにしても良い天気と、絵葉書のような風景。


クライネ・シャイデックから登山電車に乗り、アイガーの体内を回ってユングフラウヨッホへ。クリックで拡大。

クライネ・シャイデック2061m
クライネ・シャイデックの駅。2061mと書いてある。

 ここは登山鉄道の一大中継地。ここからのアイガーとユングフラウの眺めは筆舌に尽くしがたい。どうしてこんな山が眼前にあるのか理解できない。
 ビールを飲みながら1日ごろごろしていても飽きない。

アイガー北壁の登山の歴史とルート
アイガー北壁の登山の歴史とルートを説明するガイドさん。1969年の日本隊の直登がうれしい。

 アイガー北壁の登山の歴史とルートを説明するガイドさん。大変興味深い話。背後の山はアイガーだが、午前中は逆光になっていてうまく撮影できない。

 最初の北壁登頂の成功は1938年、次は1966年、1969年には日本チームが成功した。登頂の歴史の中に日本人チームが入っているのが誇らしい。
 1969年に加藤滝男隊長が率いる六人組は北壁の直登に成功したが、 その隊員である今井通子氏はその後「アルプス三大北壁・女性・初登頂」という記録を作った。ちなみに、アルプス三大北壁というのはグランド・ジョラス北壁、マッターホルン北壁、アイガー北壁をいうのだそうだ。
 最初の登頂は1泊2日かかり、次は1日で成功し、日本隊も困難な直登に1日をかけた。近年の最短登頂所要時間は2時間30分だったという。どうしてこの北壁をそんな短時間で登れるのだろう。登山というより、完全にタイムと技術と体力を争うスポーツになっている。

ユングフラウ アレッチ氷河
ユングフラウヨッホという展望台から、ユングフラウ南壁と3人の登山者(左)、ヨーロッパ最大の氷河、アレッチ氷河。(右)
メンヒ(4107m)
ユングフラウヨッホという展望台(3454m) から、メンヒ(4107m)を望む。

ユングフラウヨッホ

 クライネ・シャイデックの駅から登山電車に乗ってユングフラウヨッホという展望台(3454m)に登る。
 左上の写真はユングフラウ(4158m)を眺めたもの。
 この場所から4000m級の山がすぐ眼前に手に取るように迫っている。箱庭のようにも思え、距離感やスケール感がわからない。 空気が澄んで乾いた風が吹いている。4000mの頂上をもつ山が、細部まではっきりと見えて、その鮮明な緊張感の前にほとんど凍りついてしまう。

 下の雪原、あるいは氷河の上を歩いている3人組が見える。 写真をクリックすると拡大する。

 上の右下写真は、アイガーとユングフラウの裏山を流れるアレッチ氷河。ヨーロッパ最大の氷河といわれる。

 左の写真はユングフラウヨッホの展望台(3454m)から、メンヒ(4107m)を望んだもの。
4000m超の山頂が眼前のあるというのも、妙な気分。ほとんど登頂に成功したような気分になる。観光客はみんな子供のようにおおはしゃぎ。


アイガーの山の中のトンネルから展望台へ。

 アイガーの山の中のトンネルをを登山鉄道が走っている。アイガー北壁には岩盤をくりぬいて3箇所の窓が開いている。その窓から下界を望むことができるが、ガラスが曇っていてきれいには見えない。
 写真は駅のホームから窓のほうに向かうトンネル。
 アイガーの中にトンネルを掘り、電車を通すというのもすごいが、途中に駅を設け下界を眺める停車タイムがあるというのもすごい。
 ヨーロッパ人にとって、自然は徹底して征服すべきもの、人間の欲求に従わせるべきものなのだろう。ユングフラウヨッホ展望台に観光客を上げるためには、アイガーの山の中にラセンのトンネルさえ掘ってしまう。自然征服・観光立国の執念はすさまじい。日本人とヨーロッパ人の自然に対する考え方の違いを見せつけてくれる。
 窓からすぐ横を見ると、雪が残っている荒々しい壁面と眼が眩む絶壁をみることができる。ほとんど垂直のような北壁を登るということの恐怖のリアリティを実感させてくれる。

アイガーの北壁
アイガー北壁の正面。壁が内側にえぐれている。
夜、アイガー北壁を見上げるとチラチラする明りを3箇所みることができる。何だろうとガイドさんに聞いたら、トンネルにつけられた展望台だという。

アイガー北壁正面

 帰りの登山電車から撮ったアイガー北壁の真正面。さすがに迫力がある。壁面が内側にえぐれている。とにかく巨大な壁が眼の前を覆っている感じ。

 登山電車はアイガーの壁面の内側のトンネルをループしながら抜けて ユングフラウヨッホにたどりつく。北壁の中腹にコンクリートで固められた窓が3箇所ある。電車は2箇所で停車し、窓から下界を見晴らすことができる。夜になると3箇所の窓の明かりが肉眼でも確認できる。写真をクリックして拡大すると、コンクリートの四角い窓を探すことができる。

 アイガーにトンネルを掘り、ユングフラウヨッホ展望台(3454m)にまで電車を通すという、この観光立国への執念と自然征服にかける情熱、日本人にはマネができないかも。自然に親しむというより、生活のために必死で自然に立ち向かい格闘するといった感じか。アルプスの山がこんなに美しいのは、そのような人間の勝利の証しか。

シュレックホルン(4078m)
展望台フィルスト(2168m)からの展望。この展望台はマイナーだが、ここからの眺めはお勧め。

フィルスト展望台

 いったんグリンデルワルトに戻り、宿からすぐ近くのロープウェイ乗り場から次の展望台フィルスト(2168m)へ。
 ゴンドラ35分でこの眺望が得られる。
 正面のアンガーに似た山はシュレックホルン(4078m)でアイガーよりも高い。 この右側にヴェッタホルン3701mがあり、アイガーと同じような垂直の壁がそそり立っている。澄んだ空気の中で、谷間の村落と針葉樹と大部分を占める牧草地、そして眼前に連なる4000m級の山々、ただただこの風景に圧倒されてしまう。

 ゴンドラの往復料金は、56スイスフラン、約5600円。午後4時を過ぎると40スイスフランになる。ちと高いが、ここからの眺めは4000円の価値がある。

photo by miura 2009.9 mail:お問い合わせ
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