「ブッダのことば」スッタニパータ  中村元 訳(岩波文庫)
第2 小なる章
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  4.こよなき幸せ

 わたたしが聞いたところによると、──あるとき尊き師(ブッダ)はサーヴァッティー市のジェータ林、<孤独な人々に食を給する長者>の園におられた。そのとき一人の容色麗しい神が、夜半を過ぎたころジェータ林を隈なく照らして、師のもとに近づいた。そうして師に礼して傍らに立った。そうしてその神は、師に詩を以て呼びかけた。

258

「多くの神々と人間とは、幸福を望み、幸せを思っています。最上の幸福を説いて下さい。」

259

諸々の愚者に親しまないで、諸々の賢者に親しみ、尊敬すべき人々を尊敬すること、──これがこよなき幸せである。

261

深い学識あり、技術を身につけ、身をつつしむことをよく学び、ことばがみごとであること、──これがこよなき幸せである。

262

父母につかえること、妻子を愛し護ること、仕事に秩序あり混乱せぬこと、──これがこよなき幸せである。

263

施与と、理法にかなった行いと、親族を愛し護ることと、非難を受けない行為、──これがこよなき幸せである。

265

尊敬と謙遜と満足と感謝と(適当な)時に教えを聞くこと、──これがこよなき幸せである。

266

耐え忍ぶこと、ことばのやさしいこと、諸々の(道の人)に会うこと、適当な時に理法について聞くこと──これがこよなき幸せである。

267

修養と、清らかな行いと、聖なる真理を見ること、安らぎ(ニルヴァーナ)を体得すること、──これがこよなき幸せである。

268

世俗のことがらに触れても、その人の心が動揺せず、憂いなく、汚れを離れ、安穏であること、──これがこよなき幸せである。

269

これらのことを行うならば、いかなることに関しても敗れることがない。あらゆることについて幸福に達する。──これがこよなき幸せである。