なぜ学ぶのか
1. なぜ勉強しなければならないのか
2. 学ぶことの個人的な理由
3. 学ぶことの共同体的・集団的な理由
4. 「なぜ学ぶのか」~実現すべき自己とは何か~
5. 学ぶことの法的な規定をみると
5. 教育・学ぶことの法的な規定をみると
教育は国家100年の計ともいわれる。国家・社会の成長は、それを担う若者たちの教育にかかっているからである。個人的な思いとしての「なぜ勉強しなければならないのか」を、単純に国家の要請に収れんさせるわけにはいかないが、国家という共同体の側からする公教育への要請が法律的関係にまとめられていて参考になる。人間か教育を受け、社会にでて働くようになり、一人前の国家・社会の形成者となるということは大変なことなのだと思う。教育の関して、日本の法律は以外とよくできていて驚かされる。

日本国憲法は、「労働・納税・教育」の3つの義務を定めている。「労働・納税」は古代国家の時代からあるが、「教育」義務は明治以降に始まる。現在の日本国憲法では、教育を受けることは日本国民の義務であるとされる。
日本国憲法
第26条
1. すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2. すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
26条には、「教育を受ける権利」と「教育を受けさせる義務」の2つが規定されている。国民の立場から「教育を受ける権利」があると同時に、国家や自治体、保護者に対して9年間の普通教育を「受けさせる義務」を負うというものである。なるほど、教育は権利であると同時に義務でもあるのだ。

憲法の規定をうけて教育基本法は、教育の目的と目標を格調高くうたいあげる。
「人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」が教育の目的である。「人格の完成」という個人レベルでの目的と「平和で民主的な国家及び社会の形成者」という国家・社会の形成者としての資質の育成という2つの目的がうたわれている。
教育基本法(平成18年改正)
第一章 教育の目的及び理念
(教育の目的)
第一条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
(教育の目標)
第二条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
二 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
三 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
四 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
(生涯学習の理念)
第三条 国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。
(教育の機会均等)
第四条 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。
3 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。
第二章 教育の実施に関する基本
(義務教育)
第五条 国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。
2 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。
3 国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。
4 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。
義務教育の目的は何か。第一条では、人格の完成と国家・社会の形成者という2つの資質の形成が目的とされているが、第五条の2では「人格の完成」が「各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培」うという表現に置き換えられている。つまり人格の完成は「個人の能力と自立力の育成」に具体化されて表現されている。
学校教育法では、教育基本法で定めた教育の目的と目標を、学校教育の在り方にひきつけてさらに具体的に述べている。ここでは教科という形に区分けされた目標とされるべき態度や能力について集約している。
学校教育法(最終改正:平成23年)
第21条
義務教育として行われる普通教育は、教育基本法(平成18年法律第120号)第5条第2項に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
1. 学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。(社会的活動)
2. 学校内外における自然体験活動を促進し、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。(自然体験活動)
3. 我が国と郷土の現状と歴史について、正しい理解に導き、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養うとともに、進んで外国の文化の理解を通じて、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。(社会科・外国語)
4. 家族と家庭の役割、生活に必要な衣、食、住、情報、産業その他の事項について基礎的な理解と技能を養うこと。(技術・家庭)
5. 読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと。(国語)
6. 生活に必要な数量的な関係を正しく理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。(算数・数学)
7. 生活にかかわる自然現象について、観察及び実験を通じて、科学的に理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。(理科)
8. 健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養うとともに、運動を通じて体力を養い、心身の調和的発達を図ること。(保健体育)
9. 生活を明るく豊かにする音楽、美術、文芸その他の芸術について基礎的な理解と技能を養うこと。(芸術系)
10. 職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。(キャリア教育)
※(  )は教科との対応を別途に記したもの
上記の「教育の目標」が、望まれる能力としての「判断力」の評価判断の材料になるかどうか。
望ましい価値判断の方向として、「教育の目的・目標」とするところのものと一致することは望ましいと判断できる。しかし「教育の目的・目標」には多分に価値観を伴うため、「思考・判断」力の「判断」力の内容として使う場合には十分に吟味する必要がある。

さらに、学習指導要領の国語には、教材の採用についての留意事項として興味深い評価観点が挙げられている。読解力や作文力や聞く力の目指すものが具体的に列挙されている。
学習指導要領(平成10年改訂)
第2章 各教科 第1節 国語(3学年共通)
3. 教材については,次の事項に留意するものとする。
(1) 教材は,話すこと・聞くことの能力,書くことの能力,読むことの能力などを偏りなく養うことや読書に親しむ態度の育成をねらいとし,生徒の発達の段階に即して適切な話題や題材を精選して調和的に取り上げること。また,第2の各学年の内容の「A話すこと・聞くこと」,「B書くこと」及び「C読むこと」のそれぞれの(2)に掲げる言語活動が十分行われるよう教材を選定すること。
(2) 教材は,次のような観点に配慮して取り上げること。
ア 国語に対する認識を深め,国語を尊重する態度を育てるのに役立つこと。
イ 伝え合う力,思考力や想像力を養い言語感覚を豊かにするのに役立つこと。
ウ 公正かつ適切に判断する能力や創造的精神を養うのに役立つこと。
エ 科学的,論理的な見方や考え方を養い,視野を広げるのに役立つこと。
オ 人生について考えを深め,豊かな人間性を養い,たくましく生きる意志を育てるのに役立つこと。
カ 人間,社会,自然などについての考えを深めるのに役立つこと。
キ 我が国の伝統と文化に対する関心や理解を深め,それらを尊重する態度を育てるのに役立つこと。
ク 広い視野から国際理解を深め,日本人としての自覚をもち,国際協調の精神を養うのに役立つこと。
とりあえず、ここまで。